自分が日ごろ選んでいる作品とは大きく違っていたので不思議な感覚でした。
ネタバレしますのでご注意を。
私はSFやミステリーが好きな世界でアイスショーはそういう世界観と波長が合うと思いますがこの作品は羽生結弦氏の私小説的(と思わせる)内容でした。
観客のほぼ全員がそうした虚構の世界よりも羽生結弦自身の心を観たいと思われているのでしょうからこの選択は正しいのかもしれませんが私としてはこの舞台でそれは勿体ない気もします。
というかきっと羽生結弦という人は人生がフュイギュアそのものでその心の中にはそれしかないのかもしれません。
そして観客もそれを見たいと願っているのなら外野が意見する必要はないはずです。
しかしやはり羽生結弦という希な才能と容姿を持ったキャラクターに思いがけない異世界に誘われたい気もしたのでした。
本作品では羽生結弦がいかに頑張って辛い試練を乗り越えて来たかそして観てくれているみんなの頑張りもわかっているよ僕は孤独で君たちも孤独で寂しいのはわかっているけど大丈夫きみはきみのままでいいんだそしてぼくも・・・。
というナレーションが何度もくりかえされます。
それってこうしたアイスショーで語るべきことなのかなあと私には奇妙に思えてくるのです。
しかしこういうことはきっと羽生ファンをリサーチして選択されたストーリーとナレーションなのだろうと思うしかありません。
みんな孤独なのだなあ。
変ですね。これだけ大勢の人が同じ志で集まっているのに孤独なんて。
羽生結弦は何度も繰り返し「ぼくはひとりぼっちだ」と語ります。なぜ彼はこんなにも悲壮感に覆われているのでしょうか。
インタビューでも語られるのは彼が感じる自分へのプレッシャーです。
責任という重圧におののきながらみんなのために頑張るという言葉ばかりが繰り返されてフュイギュアスケートの美しさというより彼の苦悩がずっと表現されるという不思議なショーでした。
「ずっとひとり」「がんばってきた」「大切なもの」「できない自分」「傷つけて」「苦しい」「歩めない」「共にいたかった」「悲しくなっていませんか」
なぜこんなことばばかりをつぶやくショーなのでしょうか。
ある意味不思議な孤独の星のSFを読んでいるようでもありました。