ガエル記

散策

『三国志』横山光輝 第四巻

さて皆さまお待ちかねの曹操物語です。

惚れ惚れ曹操。やんややんや。

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

何進将軍の首が落とされ宮廷は混乱状態に。

まだ幼い帝と協皇子を十常侍たちは城外へ連れ出す。が、馬車が倒れ帝と王子はふたり彷徨うことになってしまう。弱弱しい帝を弟の協皇子が守護していく。ほどなくして十常侍を打ち取ったとして迎えが皇子たちを探し出す。

そこへ下剋上を狙う董卓が現れた。

頼りない帝とはまったく違う利発な協皇子の風格に董卓は一計を案じる。

 

ここでかの呂布が登場する。

 

呂布。『三国志』の中でも有名な武将ですね。以前『三国志』の内容をよく知らなかった頃呂布という強い武将がいて赤兎馬という駿馬を操ったと読んで素晴らしい人物を想像していたのですが何のことはない呂布と言うのは裏切りの代名詞みたいな男でしたね。

ここまで強く優れた才能を持ちながら裏切りを繰り返すいわば下衆な男でなんという無駄な才能かと思わされます。

稀代の美女・貂蝉も彼の本性を見破ってしまったから自害してしまったのでしょう。

虚しい天才ですね。

その才を董卓に認められた呂布は出世欲のために義理ではあるとはいえ父親を殺害する。

董卓にすり寄る男・呂布

なんとなく山下達郎氏思い出した。

 

そして董卓に対抗する気概を持つ男こそ我らが曹操だ。

三国志』の本当の主人公、と横山氏おっしゃってる。やっぱシャアなんだな。

 

この後ほんとに曹操物語。

子どもの頃から美貌の天才でお父様の大のお気に入り。可愛がられてた、ってことは愛情を知って育った子ですね。

大体この叱責の場面がおかしい。

お父様、叱ってるはずなのにほとんど褒めている。叱ったのは最後の「何事か」だけじゃん。大体「お前は顔も良いし」って叱る時言う?「かわいい」って言う?

 

そして人相見に言われた言葉に

奸雄=悪知恵を働かせて英雄となった人、ってことでまさに曹操にぴったりの人相見だったわけです。しかもその言葉に「我が意を得たり」とほくそ笑む。

 

曹操の冷酷さを示す「助けてくれた恩人を容赦なく殺す」エピソード。一ミリの同情もできないのだけど横山光輝氏は曹操を高く評価しているんだよね。

『バビル2世』でもバビル君はヨミが命乞いしても容赦しない。

この徹底した凄みを横山作品は孕んでいると言える。

 

やはり曹操あってこその横山『三国志』であります。

 

ある意味BLポイント。ていうかモロBLポイントだが。

曹操の冷酷さに一度は寝首をかこうとした陳宮だったが自分の前で平然と眠ってしまう曹操の豪胆さに「こういう男こそ乱世が必要とするのかもしれない」と手を止めてしまう。曹操も何度か命拾いをするのだがその一つだ。

深々と更けていく夜、命を奪おうとした男と豪胆さゆえにその命を奪われなかった男。黒く塗りつぶされた闇がふたりを覆っている。構図の妙。

すばらしい一枚絵だ。

 

その後、息子に甘々の曹パパの元に戻って体制を立て直す。

(ここの親の態度も劉備と真逆)

パパは金持ちじゃないけど顔が広いから金持ちを招いてもらって軍費を相談する。

首尾よくいった曹操は本格的に董卓征伐へと走り出す。