ガエル記

散策

『三国志』再び 横山光輝 九巻

天下を狙う曹操

 

 


ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

玄徳結婚したことがここでお披露目されて草。普通主人公の結婚って一番華やかな場面となるものじゃないのん?ストーリーに関係なければ主人公でもカットされる。

曹操は玄徳がちゃっかり徐州を領土にしたと聞かされカッとなる。これを部下に諫められまずは自国を取り戻すことにした。よかったよかった。

 

兗州城は呂布の部下たる薛蘭と李封が留守を預かっていたが軍規は乱れたるみきっていた。曹操軍はそこを突け目に攻め込んだのだ。

この頃の許褚の可愛さよ。

ところで横山先生はおおよそ忠実に原作(?)をマンガ化しているように思える。オリジナルキャラみたいなのはほぼないみたいだけどキャラクターの特に外見の改変はいろいろあって一番如実なのは張飛だろう。

張飛というと「虎髭でエラの張った顔立ちの豪傑」と書かれているのでぴんぴんした髭の丸顔で肥えた体躯に描かれがちではないだろうか。

それを横山氏はむしろやせ型の面長で髭もぴんぴんしてはいない容貌に変えてしまった。大胆なキャラ変革だ。しかし今ではこの張飛でなければがっかりしてしまう。

同じく許褚ももともとは肥満型キャラとして表現されているようなのに横山許褚はごらんのとおりすっきりとしたアスリートタイプになっている。横山氏の好みがよくわかる。

あの董卓もひどい肥満体となっていたはずなのに横山版では筋張ったやせ型となる。大体において横山作品では肥満体が活躍しづらいようだ。

逆に際立った美形とされている趙雲が太り気味の体格になっているのもおもしろい。

 

閑話休題

 

許褚はここで初手柄をたて曹操に気に入られる。

兗州城を取り戻し曹操はさらに呂布に迫っていく。ここでも許褚は呂布に一騎打ちを挑むがさしもの許褚も呂布には歯が立たない。呂布、いったい何なのかこの男。

許褚の劣勢を見た悪来は加勢するが呂布はふたりを相手にして子供のようにあしらうのだ。

それを見た曹操呂布ひとりに総攻撃をかけた。

気づいた呂布赤兎馬を駆けさせた。

一日千里を走る名馬には誰も追いつけない。

 

が、ここで呂布に立ち向かう者がいた。

帰城しようとした呂布の前で橋が上げられ城に戻れなかったのだ。

城の主・田氏は呂布よりも曹操が上と見て城を曹操に明け渡すと呂布に明言したのだった。後ろから迫りくる曹操軍に追いつかれるわけにはいかない。呂布はやむなく兵を引き連れ逃げるしかなかった。

 

かなりの兵が逃げ出した。領土を失えばあっという間に部下は離れてしまうのだ。

呂布冀州袁紹を頼ろうと手紙を出すが袁紹は逆に曹操軍と協力して呂布を一気に滅ぼそうと出陣したのだった。

怒り迎え討とうとする呂布を部下が止める。呂布軍は退却するしか道がなかった。

こうして呂布は再び広野を彷徨い続ける流軍となる。

 

呂布軍は毎晩のように兵が逃亡しわずかとなった。

「どこか頼れるところはないか」と問いかける呂布に家来は「徐州の太守となった劉備玄徳を訪ねたら」と言い出す。

呂布は玄徳に手紙を送った。

玄徳のこのなんにも考えていないような顔がいつも笑える。

玄徳は「なにか運命的なものを感じる」とか言って呂布を受け入れると決める。

この時も張飛は嫌な予感がして

パワーちゃんのような張飛。パワーちゃんが張飛のようなのか。

 

思えばこの後張飛は酒が禍してとんでもない失態を見せてしまうのだが、そもそもこの時玄徳が呂布なんぞを助けなければ張飛が死ぬような思いをせずにすんだ、ともいえる。

たらればはないけど考えたら張飛はこの時大反対してるわけで気の毒ではある。

しかし弱った者に手を差し伸べずにはおけないのが玄徳の仁徳なので仕方ないんだよな。張飛こそがその玄徳の仁徳に惚れ込んだわけだからなあ。

 

袁紹のように襲い掛かってくるのじゃないかと恐れていた呂布は玄徳が温かく出迎えてまでくれたことに驚く。しかしその後の呂布を見ればそんな感動は瞬間的なものだった。

張飛に同意。関羽の表情はどっちなの?

 

酒宴を受け喜んだ呂布は「わしのおかげで玄徳殿は徐州を手に入れた」と笑う。

これを聞いた張飛は怒り剣を抜く。(ちゃんと聞いてるねえ)

何度も繰り返されるこの張飛抱きとめポーズ。

確かに張飛を抱きとめられるのは関羽しかいないよな。

 

この頃長安中央政府は再び乱れ始めていた。

董卓の後に指揮権をとった李傕と郭汜二将軍であった。

彼らは董卓以上の悪政を行い私欲を満たしていった。

さらに互いに帝を奪い合い相手を逆賊に仕立てようと考えたのだ。

ついに帝は長安を抜け出し逃走する。

追いかけて来る二将軍の前に側近董承が持ち出した財宝をばらまき兵たちが財宝を奪い合う間に逃げ延びた。

帝は洛陽に戻る。洛陽こそが皇室の歴史だった。

洛陽はすでに廃墟となっていた。が、帝はもうここから移りたくないと言う。董承は「ではここに住みましょう。やがて各地から忠義な男が駆け付けて来ましょう」と申し上げた。

董承のいったとおり帝を慕う者が集まり少しずつ街の再建に取り組みだしたのである。

なんだかいい話だ。ここで終わってもよかったのだがw

もちろん『三国志』はここでは終わらない。てか三国もまだない。

その直後、天下を睨む曹操の姿が描かれる。

天子は曹操に助けを求めてきた。

これこそが曹操が天下に手をかける手がかりとなる。

 

曹操軍は李傕郭汜二将軍を叩きのめした。

この戦いでも許褚は目覚ましい働きを見せる。曹操は今や天子を側に置く最強の軍隊を持つ将軍となった。

しかしその曹操はまだふたりの男のことが気になるという。

呂布劉備玄徳」

そして曹操は都を洛陽から許昌へと移す。洛陽に未練がある帝を説得しての遷都である。帝はもはや曹操に頼るしかなかったのだ。