ガエル記

散策

『影丸と胡蝶 ほか七編』横山光輝時代傑作選「仇討ち始末」「ほらふき陣左」「恋と十手とお銀ちゃん」

さてネタバレしますのでご注意を。

 

 

「仇討ち始末」増刊漫画サンデー掲載1968年

腕は立つが道場破りをしてはその日の糧にしているだけの貧乏浪人である主人公。

仇討の助太刀をする報酬を受け取るが・・・・という物語。

横山氏はこういうみみっちく生きている男の話は不得手なのではないだろうか。顔を赤らめたりして可愛すぎる。

「ほらふき陣左」原作:辻真先 別冊漫画アクション1972年

表紙の陣左衛門は自分の武勇伝を長屋の子どもたちに語って聞かせる。子どもたちはそれを楽しみにしているのだが実際の陣左は武士の間では臆病者として嘲られていた。

このキャラは辻真先氏によるものだからだろうか。横山オリジナルではなかなかお目にかかれそうにない。

とはいえこの感じは横山節

ここを描きたくてのマンガだったのではと思わされてしまう。とても良い絵だ。

 

大坂夏の陣でいかに勇敢だったかを語っていた陣左だったが実際は一度も人を斬ったことがなかったのだ。

長屋で大工となった陣左はそこに住む愛らしい娘に恋をするが娘にはすでに許婚がいた。

その時長屋は立ち退き騒動に巻き込まれた。お上に訴えようとするのを荒くれ者の浪人たちが力で抑えようとしてきたのだ。立ち退きを求めてきた樽屋の差し金だった。

その浪人たちはかつて戦場で陣左がいかに臆病だったかを知っており笑いものにした。

長屋の人を助けるため(というか子どもと娘さんにいいとこを見せようと)陣左は勇気を出して浪人たちと戦い初めて人を斬った。しかし相手の刃は陣左の命も断ち切ってしまった。

しつこいが横山オリジナルではなかなか読めない味わいだ。横山先生もいろいろと試されたのだろうなあ。

でもやっぱりそれ以降も横山氏は横山氏だと思う。

 

カニの赤槍」週刊漫画ゴラク1972年

これもちょっと変わった風味の作品だ。

とある村に転がり込んできた才蔵という武士の話。村人はその男を気の毒に思い小屋を与え食べ物まで分けたのだ。

まったっく美形ではないのだが(上の画像参照)どうしたことか村娘は彼にぞっこんとなり次々と彼を求めにくる。

村の男たちは怒って才蔵を殴りつけるがまったくこたえておらず心配してやってきた娘とまたも楽しむのだった。

 

そんな才蔵のぼろ小屋へ今度は次々と武士たちが訪れてくる。彼らは才蔵を召し抱えたいという石田三成福島正則の使者だった。

才蔵を殴った村人たちは大慌てとなり態度を豹変した。

才蔵は一万石を申し出た石田三成を蹴って千石と言った福島正則に仕官する。

断られた石田三成の家来が襲ってきたのを成敗し才蔵は慕ってきた村娘を従えて旅立った。

この才蔵は可児才蔵とも呼ばれた可児吉長という槍の名手であり実際に豪傑で大活躍した人物のようだ。

このような女好きだったのかは知らないけど面白い。

やはり横山氏の豪傑物語はかっこいい。

 

 

「恋と十手とお銀ちゃん」プリンセス1975年

なんだーこの楽しいタイトルと表紙は!!!そしてお銀ちゃんが可愛い!錦一郎さんが良い味出してる。

たった一回の読み切りだったのだろうか。もったいない。今からでもアニメ化求む!誰か気づいてくれ。(人死んでますけどね)

私は横山女子すごく魅力的だと思うんですよ。氏がだんだん女子を描かなくなってしまったのはほんとに残念です。

女の子らしく可愛いのだけど頭が良くて腕っぷしも強い。クールな錦一郎さんもすてきだ。

スケバン刑事』を連想してしまった。しかも『スケバン刑事』は76年からだ。まさかこのマンガからヒントを得たのでは?(冗談です)

 

お銀ちゃんのかっこよさ、この短編のみで終わらせてしまうのは無念すぎる。人形左七さんはいいけど、お銀ちゃんをもっとみんなに知って欲しい。じたばた。