ガエル記

散策

アイドル界と山口真帆さんのこと


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NGT48に所属していた山口真帆さんの事件の一部始終はテレビなどの報道で大まかには知っていました。

アイドルの悲劇というのは繰り返されてきました。今回もまた暴行被害を受けたアイドル女性が逆に謝罪をする、という奇妙な展開が起きてしまいました。

こんな不可思議なままで幕を引かされるのか、と思っていたら被害者である山口真帆さんが今までにない行動を始めたのです。

 

正直、私は子供の頃からいわゆる「芸能界」というのが嫌いでした。話を聞けば聞くほどおぞましい世界だと思えてならなかったのです。子供の自分でもおかしいとしか思えない世界を多くの人が憧れ、そしてそういうものだと認識し、特殊な世界であることを容認している、そんな状態が長い間当然とされてきたのです。

その中でも特に「アイドル」という人たちは奴隷としか思えない待遇を甘んじており、それがどういうわけか社会の中で「アイドルと言うのは見かけだけ綺麗で頭は悪い。《事務所》という存在がなければ何もできない奴らで若い間だけ価値があるが20代にもなればもう年寄りでどんどん価値は下がるだけ、結婚どころか恋愛は厳禁でいつもにこにこしてファンや《事務所》に反抗してはいけない。反抗などしたらクビになるのは当然だ、お前の代わりなどいくらでもいる、そういうことくらい常識だ」ということが定着しており誰もがそうだと思っていて「アイドルにも人権があるのじゃない?」などと言おうものなら逆に「馬鹿かお前は」と嘲笑われてしまう、というのが嫌で嫌で自分自身はこの世界を見たくもないし、語りたくもない、という気持ちでいたのです。

 

少なくとも私が生きてきた間、昭和からこの平成の最後の時まで日本という社会がそういう共通の認識をしてきたはずです。

 

が、山口真帆さんという一人のアイドルが長い間変わろうとも変えようともしなかったこの奴隷制度に一石を投じてきました。

あまりにも惨たらしくて見たくもなかったアイドル世界が変わろうとしているのでしょうか。

彼女は真剣に「アイドル」に憧れその仕事を全うしようとしていたアイドルだと聞きました。「アイドル」を胡散臭い世界に憧れる変な人たちだという偏見の目で見て来た私と違い、まじめにその世界で働こうとしていた女性なのです。

そんな一途な女性が巻き込まれてしまった事件に対し彼女が所属していた《事務所》の冷酷な仕打ちはいったい何なのでしょうか。

世界は変わります。変わるべきですし、変えなければなりません。

かつてと比べてアイドル業界そのものも変化してきたし彼女が所属していたグループもその変化のひとつだったはずなのですが、体質は変化していなかったというわけですね。

若い女性からもたらされる価値を短い賞味期限の間に目いっぱい搾り取ろうとし、少しでも障害が生まれると「もう役に立たなくなったじゃないか」と舌打ちをする。

そして「それがこの世界なんだよ」とお決まりの言葉を吐く。

そういうことが数えきれないほど繰り返され女性たちを踏みつぶしてきました。それでもなぜか再び若い女性がこの世界に入ってくる、ということが終わらないのです。

 

日本の芸能界には労働組合が存在しないそうです。これも作らせない、できたとしても入らせない、というような圧力があるのだろうと思われます。

現在の日本社会は様々な事柄がいまだになあなあでやっているとしか思えません。あまりにも色々なことが改革されないままに時間が過ぎてしまいました。

芸能界、アイドル界という世界は昭和のままを今でもひきずっている、というより悪化していると思えます。一人一人を育てようとしていた昭和はまだしもでした。

AKB系列アイドルは数を増やすことで個々の価値をもっと低下させてしまいました。「卒業」という言葉の魔法で価値のなくなった女性を追い出し、新鮮なアイドルを「入学」(こう言ってるのか知りませんが)させれば何の問題もなく存続させ続けられます。

アイドルの女性たちに自分たちで売り込みを考えさせ行動させ選挙なんて言う催しで盛り上げさせて個々に価値の順番をつけてしまうのです。

この怖ろしい奴隷市場を自分たちで嬉々として行うのを運営側は笑いながら見ているのかと思うとまたもや自分のアイドル界嫌悪症が出てきそうです。

私はそういう芸能界・アイドル界そのものに疑問を持つ者ではありますが、その世界で懸命に一途に働こう・皆を元気づけようとしていたアイドル女性が踏みにじられたことで声を発したことを無視はできません。

 上でリンクしたのはこの山口真帆さん事件に関して怒りをつづったグラビア女優・石川優実さんの言葉です。

この文章は本当に素晴らしいものだと思います。

同じく芸能界で働く女性の当然の権利を訴えています。

「芸能界はそういうところだと判っているのが当然だろ、嫌ならやめろ」という決まり文句は発するべきではありません。

私はアイドル界が嫌いですが、だからと言ってその存在を排斥してはいけないのです。

アイドルを好きな人たちがいて、アイドルになりたいという人たちがいて、その世界を作り上げようとする人たちがいる。

その世界がまっとうな人権を守りながら存続できる、そういう社会に変革していきたいのです。