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「文豪お墓まいり記」山崎ナオコーラ

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山崎ナオコーラさんの本は読んだことはこれまでになく、この本に取り上げられている日本の文豪さんたちにもあまり馴染みがないのですが「文豪の墓にお参りする」というそれ自体はよくあることなのかもしれませんがそのことをまとめて本にした、という企画が面白いなあと思って読んでみました。

 

ここに書かれている「文豪」さんたちの数は26名。その中で私が1作品でも読んだことのある方は11名です。本当に1作品だけの作家とかなり読んだ作家とが混じりますが。

 

そのうち歌川国芳は浮世絵師なので絵を見た、ということになりますが。

他はさすがに日本の作家なので名前だけは見たことがある、という感じだったりもします。本好き、などと言ったりしてますが極端に日本の作家さんは読んでいないですし、文豪と呼ばれる方のは余計そうかもしれません。

 

ところで私は自分が読んでいなくても他の人がある作品や作家について書いたものを読むのはとても好きです。これは映画にも言えるのですが。

人が何かに対しどんなにそれを好きか、もしくは嫌いか、どう感じ考えているのかを読んだり聞いたりするのが面白いのですね。

 

そしてこの本の面白いところは文豪の本を読んで墓参りをすることで一つの物語ができているところにあるのでしょう。

ただ文豪の作品の批評を書くだけではなく、亡くなったその人の墓を見て何かを感じ思いをはせていくことと作品のイメージが絡み合う面白さがあると思います。

そしてそれは墓参りをするその時の自分の体調や天気や気温、誰と行ったのかどんな人と出会ったのかもかかわってきます。

墓参りの後に立ち寄ったカフェのコーヒー、レストランでの食事にも墓参りをした作家のイメージが重なって感じられてくるように思えます。

 

もちろん、自分が同じことをする場合、その文豪、作家が思い入れの深い人であればよりその感覚は強くなっていくのではないのでしょうか。

お墓参りをして作家への気持ちを書く、というのはそれぞれに出来そうでとても良い考えに思えます。

 

表紙の二人は永井荷風谷崎潤一郎です。

詳しいかたであればすぐにわかり、どちらがどちらかということも察せられるのでしょうけれど、私は悲しいかな、谷崎を少しくらいしか知らないのでこの表紙がツボになったりしなくて残念でした。

それでも作家同士の先輩後輩の話も興味はそそられます。

そうした作家たちを思いながら墓を参り帰りにカフェによって思いを語り合う、或いはひとり考えに耽るのも良いなと思います。

 

 

これはもう蛇足ですが自分の好みを書いてみます。

上で書いた読んだことある11名の作家のうち、一番若い頃に読んだと思えるのは星新一。その後読まなくなってしまいましたが、やはり一度は読むべき文豪だと思います。

一番本を多く持っているのは渋沢龍彦。一時期かなり入れ込んで読んでいました。作品数が少ないので持っているのが少ないけど一番多く繰り返し読んだのは森茉莉。あの耽美な男同士の愛の物語である「恋人たちの森」よりも「甘い蜜の部屋」のほうが何度もんでいます。中島敦は「山月記」のみ。夏目漱石は「こころ」「坊ちゃん」と後少し。でもやはり「吾輩は猫である」は特別に面白い。有吉佐和子は「和宮様御留」