映画『殺人の追憶』は私が韓国映画にはまるきっかけになった作品のひとつです。というかここまで面白くよくできた作品は世界規模でもそうそうないのではないでしょうか。
以下ネタバレもあります。
上に見えているイケメンさんのほうではなくもう一人のダメダメ田舎警察官のソン・ガンホに惚れ込んでしまいました。
そして自分が住む地域の近くでも似たような未解決連続殺人事件があったりするのも余計にこの映画に共感できる要素になっていたりもします。
練られた脚本、美しい映像、俳優陣の魅力、ゾクゾクしてくる恐怖感、おかしみがありながら緊張感のある雰囲気、暗闇、しとしと降る雨、古びた田舎町の様子、これを観た時、もう日本映画は完全に負けてしまったな、と思いました。
実際それ以降日本映画はごく一部を除けば衰退の一途を辿るばかりですし、韓国映画は着実に良作を作り続けているのは誰の目にも明らかでしょう。
というそんな衝撃を与えてくれたこの作品が実話でしかも未解決のままだと知った時は上にも書いたように自分の身近な事件とともにこのまま闇に葬られるのだろうな、とばかり思っていたのですが。
まさかここにきて、30年ほどの歳月を経て解決に至るとは思いもよりませんでした。
実際の捜査でも韓国は日本の上を行っている、ということになりますか。
映画では最終的にある若い男が怪しいのではないか、という嫌疑をかけアメリカにDNA鑑定を依頼するのだがそれが結局「一致せず」となってしまう、という物語でした。
ラストの「犯人はまだここにいる」という表情のソン・ガンホの大写しは忘れられないものです。
それが現実に解決する方向へ向かっているのです。
50代の男の30年前の事件、とすればやはりあの映画で「若い男」という容疑者は正しかったのか?
映画製作をしたのは事件から10年以上経ってからのことですが、それを踏まえてのインタビュー記事の言葉。
また「映画の公開当時、あるインタビューで記者の方が『なぜ過ぎ去った事件を突然、映画にしようと思ったのか』と質問したのだが、『記憶すること自体が、報復の始まりですから』と答えたのを覚えている」とし、「ポン・ジュノ監督も私の言葉を覚えていたようだ。昨日、『やっと(犯人に対しての)報復となり、終わりを迎える』と感じられた」と思いを明かした。
こんな思いで映画を作っていれば面白くならないはずがない、(もちろん技量があってのことですが)と思ってしまいます。
日本での舞台化も予定されている作品です。
映画でも運命の分かれ目となってしまったDNA鑑定の進歩がすべてだったのですね。