なぜかアマプラの「日本映画」のカテゴリの一番目に入っていて気になり(今は変わっていた)レビューを見たら惨憺たる評価で「ダメダメ映画」「肝心な場面が描かれていない」「恐怖も生い立ちも中途半端」「他のを観るのをおススメ」つまりショッキングシーンは皆無で説明足らずストーリーも面白くない、の連発でしたが逆にそそられて観る事にしました。
結果を言えばかなり面白かったです。これが面白くない、というのはやはり観る角度が違う、ということなのでしょうか。
しかも相当エグいし不気味でもありました。
いわばシリアルキラーがその狂気の扉を開けて闇の奥へ進んでいこうという一時期を垣間見た、という映画でしょうか。
ジェフリーを演じたジェレミー・レナーはあの『ハート・ロッカー』で主演して後も数々活躍している俳優です。下積み時代が長かったようでこの映画で評価されたとのことですが、この時すでに彼30歳を越えていて初々しいとは言えませんが、「可愛い男」の要素を感じさせてくれます。
同性愛者の殺人鬼の物語の場合、メジャー作品だとゲイ表現は抑えられるのが通常ですが、本作は同性愛描写のほうが前面に押し出されています。
私はジェレミー・レナーをよく知っているわけではないのですが、現在のアメリカ男優はここまでゲイ表現をするようになったのかと隔世の思いもありました。
しかも昔よくあった「女装趣味」「女性的」「内気」というような修飾はされることもなくターゲットとなる相手も「ごく普通」というと語弊がありますが普通に男らしい可愛さはあるけど「なよなよした」いわゆるオカマっぽい男(うう差別用語の羅列になって申し訳ないですが)や女装の売春夫とかではない普通に男の子らしい男の子、なのも映画表現もかなり変化してきたものだなあ、という感慨をもたらしてくれました。
そうした男性同性愛映画史としての賛辞も含めて本作は連なる悪評レビューのように「観る価値のない映画などではない」と思います。
確かに大げさな演出はなくくどい説明は省略されていますが、ジェフリー・ダーマーという青年が暗黒面に堕ちていくさまをねっとりと丹念に描いており時系列が狂ってごちゃごちゃになっていくのも彼の頭の中を覗き込んでいるかのような気持ち悪さを演出していると思えます。
アマプラのレビューなど気にせず、というよりも一般の評価がこれだからこそ自分で確かめてみたい、という気概を持ちながらこのおぞましい狂気の映画に足を踏み入れてみるのも一興でありましょう。
ジェフリーが最初の死体を切り刻むのはかなり躊躇していたのに回を重ねれば腹を切り裂き内蔵に手を突っ込めるようになるのも酒や麻薬の中毒と同じ麻痺を感じさせてくれます。
さあジェレミー・レナーのあの透き通った眼差しに導かれてあなたも迷い込んでみませんか。
ジェフリー・ダーマーは1978年~1991年アメリカで17人の青少年を殺害した白人男です。
年代的にリアルタイムで知っていてもいいはずですが、私は記憶していませんでした。しかも1960年生まれというほぼ同年代ではないですか。
ただただ血しぶきの飛ぶ残虐映画を求める人には確かに向きませんが人の心の闇を覗き見たいならじっくり鑑賞できるでしょう。