ガエル記

散策

『ブロー・ザ・マン・ダウン~女たちの協定~』ダニエル・クルーディ、ブリジット・サヴェージ・コール

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Amazonオリジナル映画です。もちろんアマプラで鑑賞。

 

いまだに時折「映画はもう作られすぎていて新しい物語を作ることができない」という人(ほとんど男性)がいますが、そのほとんどは男性主人公、もしくは男性目線での女性主人公(つまり女性の視点ではない女性主人公)(原作者が女性であっても映画製作時点で男性目線になる)なので女性目線での女性主人公もしくは女性目線での男性主人公の物語はほとんど作られていないことになります。

やっと少しずつ女性映画監督が出現するようになってきたとは思いますが個人でできる小説家やマンガ家、画家とは違い大勢を指揮しなければならない映画監督女性はまだまだ少ない存在です。なのでいくら女性映画監督作品だからといってすべてを好きになれるわけではない、というのが現状です。

 

そんな不満な気持ちでいる中でこの作品はほんとうに面白い作品でした。

共同監督ですがブリジッド氏はもちろんのこと、ダニエル・クルーディ氏も女性でありました。

 

ネタバレですのでご注意を。

 

 

 

女性が活躍する物語、といっても本作は超能力者とか怪力女とかのスーパーウーマンが出てくるわけでもないし特別な才能や知能指数が恐ろしく高いというハイクオリティな女性が男性を見下すわけでもありません。

 

舞台はアメリカ、メイン州の海沿いの町イースター・コーヴ。小さな漁業の町です。冒頭にそこで働くフィッシャーマンが謳い上げる場面から始まり、殺人が起こり警察が捜査を始める、といえばもう男の映画というのが定番ですが本作で主に活躍するのは女たちであり一見男の町のように見えてそこを牛耳っているのは女たち、とくに年老いた女たちこそが町の支配者なのだった、という物語なのでした。

 

女性監督による女性たちの物語、ときくと小うるさいフェミニズムをまた説教されるのか、もしくは惨めな女性たちの物語をまた観させられるのか、と身構えてしまう面々もありましょうがこの映画はそういう嫌なものさえ吹っ飛ばしてしまった、タイトル通りに「ぶちのめしてやる」映画でありましたよ。

 

母親と姉妹の物語であり、若い女と老婆の確執であり、売春宿が存在し、姉は内気でややヒステリック、逆に妹は夜遊びをして変な男にひっかかる。題材設定は女性映画によくあるパターンでありながらそれらをひとつひとつぶちのめして面白い映画に仕立て上げたのは二人の女性監督たちの思いであるはずです。

「女性映画っていうのはこういう話だよな」という嘲笑をぶっ飛ばしてやった、そういう作品であると思います。

女性監督だと「可愛い女を出さないからな」というヤジもぶっ飛ばしてくれました。主人公姉妹もおばあちゃんたちもすこぶるチャーミングではありませんか。

 

女性映画はまだまだ少ししかありませんがダニエル・クルーディ&ブリジッド・サヴェージ・コール監督の本作はその未来を明るく示してくれたように感じます。

 

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さあみんなで歌いましょう!