東大教授と語る【政治と社会のエネルギー】自民党の菅総裁誕生とれいわ一揆の熱狂とその後の沈静化。ホイヘンスの同期理論の基礎と応用から見る共有幻想とスピノザの気づき。安冨歩教授電話出演。一月万冊清水有高。
相変わらず『一月万冊』観続け聞き続けています。
その中で
「excommunication」
という単語について安冨教授が話されていました。私は知らなかったのですがこれは
「破門」
という意味になるのですね。
日本語でも定着した感がある
「communication=コミュニケーション」
という言葉に
「ex=外へ」
という接頭語をつけると
「excommunication=破門」という意味になる。
というのは日本人が思う「コミュニケーション」からは想像がつかないものかもしれません。
もちろん英語を理解しきっている方なら当然なのかもしれませんが安冨教授が興味を持って取り上げているのですからやはり「日本語として使う‶コミュニケーション”とは違うね」ということなのでしょう。
とにかく英語の意味をまったく理解していない私にはとても面白い興味深い言葉だと思えました。
まずは「communication」を検索してみましょう。
伝達、報道(すること)、(熱などを)伝えること、(病気の)伝染、通信、交信、文通、(伝えられる)情報、通信文、書信
などと書かれています。
これらの意味は日本人が一般に「コミュニケーション」の意味として使っていることです(熱と病気の伝染、には使いませんが。これはちょっと面白い意味でした)
なのでこの違いは単なる言葉の意味の違いではなくそれぞれが持つ言葉のイメージの違い、なのではないでしょうか。
英語と日本語の「差異」は言葉のイメージの違いから起きることがよくあります。
例えば太陽が西に沈む、という時日本語は「西」という一点を指しているのに対し、英語では「西と言う区域」という空間を意味している、というように。
『一月万冊』の安冨・清水両氏の対話は「communication」の語源ラテン語「communicatio=コムニカチオ」へと進み、その意味は「共有すること」なのだという話になります。
コミュニケーションとは共有する、という意味を持っていた。
ここで私は「あっ!」という声を発することになりました。
私の手元には創元推理文庫1979年25刷『異星の客』があります。(この厚さの本で25刷すげえ)高校生当時に読んだのではないかと思われますが(すでにその記憶はない)ハインラインの凄さを感じた一冊でした。
主人公マイク・スミスは火星から来た男で地球人の考え方を一から学ばねばならないのですがその際に彼は出会う人々と水を飲み合うことで「水兄弟」という分かちがたい存在になります。
そして聞く言葉をひとつひとつ「グロク=認識」していく、のです。
当時少女だった私はこの「グロク(grok)」というハインラインの造語に打たれました。「水を飲むように相手の意識・考えていること・思いを飲み込んでしまう」それが認識なのだと。
作品中でそれが語られている部分があります。
「グロクは、そっくり同じという語です。火星人は本能的に、われわれが近代物理学によって
苦労して習った“観察者は観察する行為を通じて観察対象と相互作用を持つ”ということを知っています。
グロクというのは、観察者が対象の一部となってしまい、溶け込んで混じり、合一し、
集団体験のなかに自我を失うくらい完全に理解することです。
徹底的に相手と自分が溶け合うくらい理解して、そのうえで初めて憎むことができます。
憎悪とは自分自身を憎むことでもあります。 これはまた相手を愛し、
いとおしむということでもあり、それ以外には考えられないのです」
ここは下のブログから勝手ながら引用させていただきました。ありがとうございます。
「グロク」というハインラインの発想に「なんという天才か」と驚き40年間ほとんど読み返していないにも関わらず覚えていたのですが、コミュニケーションという言葉自体が「共有する」という意味あいを持っていたのならそこまで驚かなくてもよかったのかもしれませんが、それでも他の人は書いていないのですからやっぱりハインラインは偉大です。
とにかく高校生の驚きが40年の時を経てやっと「そういうことだったのか」という納得に至るという長き道のりでした。
(ちゃんと勉強していたら判っていたはずですねてへぺろ)
いやこういうのが面白いのです。