図書館で借りて読みました。今まで彼の小説を面白いと思ったことはないのですが、もしかしたらという期待はあっさりと裏切られ、というよりも正直「読んでみよう」などという気持ちを起こさなければよかったと後悔すらしています。
私が先に読んだのは最後にあった表題作なのですが、これほどいやな気持になる小説が他にあるのだろうかとさえ思います。
ネタバレしますのでご注意を。
この短編で村上春樹氏が言いたかったのはいきなり罵声を浴びせてくる者への嫌悪感なのでしょう。
しかし相手は中年の小柄な女性であまり体力はなさそうです。
翻って主人公はよぼよぼとは思えない男性です。
この男性から見て「小柄な中年女性」から罵倒されてもさほどの脅威には思えません。
小説にはスリルとサスペンスが必要です。
例えばこれがスティーヴン・キング『ミザリー』ならば相手が女性とはいえ主人公が明らかに劣勢なのが分かります。ここに恐怖が生まれます。
しかしこの小説の生ぬるさはなんでしょうか。
彼女の罵倒に心から震え上がることがあるのでしょうか。春樹氏は「ぼくならある」と答えるかもしれませんが多くの読者はそうではなさそうです。
なぜならいくつかのレビューを見ても「ぞっとした」「怖くて震えた」という感想はなかったからです。
何故村上春樹の主人公は恐ろしい敵と対峙しないのか?
そんな小説を読んでも意味があるのでしょうか。
他の作品もちらりと見ましたが「醜い女性をあざける話」「ヤクルトスワローズの弱さをあざ笑う話」などを何の意味もなく書き連ねていっているだけのようでした。
自分だけは特別で他の者には何の価値もない、と言っているようでした。
村上春樹という作家を特別視している人たちが多くいるようですが、彼の新しい小説を読んでも何の意味もないように思えます。
ただ嫌な思い出になるだけです。