ずっと気になり続けていたにもかかわらず未見だった『トレインスポッティング』ついに観ました。
『SonnyBoy』というアニメが後押しで観ることになろうとは。
本作は1996年製作で日本でも同年に公開されています。当初から気になってはいたはずですし劇場ではなくとも早めに観ようとすれば観れたはずで、というか観始めてみたらやっぱり一度は出だしだけでも観たような気がします。それなのに観ていなかったのはなぜかなのですが。
ヤク中(という言い方を今はするのかな)の話が嫌いなわけではなくむしろもっと以前は大好きでよく観ていたものでした。ヤクはやったことは一度もありませんが物凄く興味があって読んだり観たりしたものでした。観すぎるくらいに観ていました。80年代まではヤクにはまって堕落していく話にめちゃくちゃ惹かれていたのです。
なので私のクスリ知識(というほどのものではないが)は80年代までのものかもしれません。
というわけで1996年製作以降には私はこの映画に気持ちが乗れなかったのでした。
以下ネタバレしますのでご注意を。
とはいえ今回観始めてみるとさすがに映画作りが非常に上手くテンポよく進んでいくし内容も下劣ではあっても意外に思いやりや友情、家族愛もあって気分よく観れてしまいました。大ヒットしたのもわかる楽しい映画でした。
しかしこれ、裏返せば実際のヤク中問題としてはかなり手ぬるい話と言われていたのではないでしょうか。
主人公マーク・レントン自身が言っていますが、エイズの嵐が吹き荒れる中で薬を注射器で打ちまくって陰性のままであり高校生女子とセックスを何度かしているのに妊娠しないままであり車と衝突しても身体を欠損することもなくその他もろもろ主人公に多大な被害は及ばずなのです。
またそれがなかったからこそ「楽しい映画」として観られるわけです。
高校生女子を妊娠させて堕胎もしくは学校へ行けなくなったりしたら主人公は鬼畜だし、注射器感染でエイズになったら当時は死亡だし、友達と同じく刑務所送りになったり大怪我をして動けなくなったりなどであれば「楽しい映画で大ヒット」にはなりにくい。しかし現実にはそのどの可能性も大きいわけです。
文句なしに面白い映画ではあるけどそうした虚構という条件付きの面白さであるのは否めないのです。それであれば「文句なし」とは言いにくいですね。
まあダニー・ボイル監督は「運のいいクズ」と割り切って本作を作ったのではないかと思います。
そういう意味では『エヴァンゲリオン』も「運のいいクズ」ではないでしょうか。
碇シンジのような人間はいますが果たしてその人々の周囲にあのような友人や女性たちが幾人もいるのかと考えればとてもあり得ない。
やはり人気の出る映画と言うのは「運のいいクズ」を描くところにあるのかもしれません。
そして本来の目的であった『SonnyBoy』の元ネタ場面はしっかり見届けました。
たしかにあの場面は本作から取られているのは間違いないですね。