実は本作の情報をまったく知りませんでした。
映画の内容をかなり調べた上で鑑賞することもあるのですが時折こんな風にまったく知らないまま観てしまい驚いてしまうのです。
本作はまさにそんな作品でした。
ネタバレしますのでご注意を。
しかし有名な映画なのにまったく知らずに観てしまう、というのは奇妙な出来事でした。
出だしはよくある貧乏な男と富豪の家に生まれ育った女が駆け落ち的に結ばれる過程がざっくり描かれます。
その時富豪の父親は目の前で出ていく娘を見送りながら「娘はおまえとの貧しい生活に耐え切れず必ず戻ってくるだろう」と娘婿に吐き捨てるのです。
ヘンテコで不思議な描写ですが本作はミュージカルでありすべては比喩的に表現されているのだと脳内変換しなくてはなりません。
そもそもこの物語自体が比喩であるのです。
「必ず君を幸せにする」
これもよくある男のセリフですが本作の主人公はこの一途な思いで行動しその思いだけは貫徹するのですが次第にずれていく展開となるのですね。
バーナムは愛するチャリティとの間に可愛い二人の娘ができますが勤め先は倒産し無職になってしまいます。それでも妻と娘は愛情を失いません。
苦境のバーナムがやりくりして始めた「珍しい物を集めた博物館」はまったく儲からなかったのですが娘が言った「生きているものが見たい」という一言から引き出した考えが「珍しい生きもののショー」だったわけです。
小人症や髭女、巨人症、結合双生児などのいわゆるフリークスを集めたサーカスの団長としてバーナムは成功をおさめ念願だった家を買い妻や娘たちにもやっと裕福な生活を与えられるようになったバーナムでしたがさらに上流社会に入りたいと願い仲間たちを見捨てて美しいオペラ歌手女性との公演を始めます。
その公演も最初成功しますがオペラ歌手からの求愛をバーナムは受け止めきれず中止となり再びバーナムは破産し醜聞のせいで妻は離れていきました。
バーナムが求めていたのは愛する人を幸福にすることでした。
しかしそれがいつの間にか少しずつ歪んでしまったのでした。
もっとも大切な家族を失い絶望するバーナムのもとに集ったのは元の仲間たち。
バーナムは勇気を得てもう一度愛するチャリティと娘たちを取り戻すのです。
素晴らしい歌声と迫力ある演技。フリークスたちの踊りに涙が込み上げてどうしようもなかったです。だめだなあ。
まさかこんなお話だとは思ってもいなかった。
確かにどおりでヒュー・ジャックマンしか見えてなかったんだよね、この映画のポスター。
何も気づかなかった。
いろんな人が幸せでいられますように。
たぶんいろんなひとが自分もこの中のひとりだと思うのではないかしら。
そう思って泣けたのです。