続けて観ています。
『ベルサイユのばら』が話題になる時はほとんどが前半のダンスパーティとアンドレとオスカルの愛の場面に限られているように思えますがもちろん本作の醍醐味は貴族社会の在り方に疑問を抱き始めたオスカルが華やかな近衛兵連隊長を辞任して衛兵隊隊長となり平民の苦しみを体感し革命へ進んでいくこの過程にあると思えます。
池田理代子氏のこの後半の描き方は凄まじい。
華やかでありながら史実に沿ってフィクションであるオスカルと実在したアントワネットというふたりの女性を巧みに描き分けていく。
アニメはこのあたりから特にマンガでの表現との乖離が感じられます。
悪い、というわけではないのですがこの微妙な表現の違いこそがジェンダー問題の要になっているように思えます。
どうしても女性である池田氏のオスカルの描き方よりも男性陣の多いアニメ・オスカルは無理があるように感じられますし、その分男性の描き方はアニメ版のほうがよりリアルであるようにも思えます。
例えばアニメ版のアランがマンガ原作より年上で荒っぽくなっているのは貴族と平民の差異をより明確にしようとしたアニメスタッフの計らいでしょう。
池田氏描く平民兵士は栄養不足で貧弱に見えてそれはそれでリアルにも感じますがアニメ版はゲスで野蛮で男臭いなんとなく『宝島』に登場した海賊たちのゴツサを醸し出しています。
この辺りはそれぞれの思惑で良しと思われますがオスカルとアンドレの微妙な感受性はアニメではなかなか難しいようです。
それにしても声優陣のすばらしさは今更ながら感激します。
オスカルの田島令子の声の絶妙さはこれ以上のものを考えることができません。凛々しさと気高さと甘さを感じさせ男装の麗人オスカルそのものです。
アンドレ役の志垣太郎。本人の姿を知っていますがアンドレの声になっている時はその姿をまったく感じません。特に「オスカル」という発音がこれ以上ないほど心地よく感じるのです。OPの最後の「オスカール」という叫び声が何度聞いても惚れ惚れしてしまうのです。どういう魔法か。
ロザリー役、吉田理保子。なんてかわいい声なんだと聞くたびに感心していました。可愛いながら毅然として健気でまさにロザリーにぴったりという。なぜこんな声があるの?と不思議です。
片足の吟遊詩人。これはアニメオリジナルでしょうか。
いつも暗い路地に座って詩を歌うというものでほとんど声の出演と言っていい役です。
演じていたのは小川真司。平民の苦しみを語る印象的な役です。