すごいな、と思います。
皇帝と皇后という設定にしながら描いているのは普通の夫婦の物語です。
ネタバレしますのでご注意を。
ついに事実としてあったとされる嫻妃(如懿)の髪を切る場面が訪れました。この行為は当時同族の間で皇帝の葬儀の時にしか許されないという禁忌でありました。
如懿は自ら廃后を望んでその行為をとったのです。
歴史上ほとんどなかった廃后となった嫻妃はこれまで悪女として描かれていたのが本作では最も気高く清廉な女性だったからこそその道を歩んだ、という架空の軌跡を本作は丹念に辿ってきました。
皇帝の幼馴染で深く愛し合ったふたりがそこに至るまでの道程を私たちは観てきました。
その経緯は奇妙なものでも特殊でもなくごく当たり前の夫婦がよく陥りがちの意地の張り合いです。
妻が落ち込んでいる時に夫が慰めもしなかった。
仕事に疲れた夫がストレス解消にと女遊びをしたのを諫める妻に逆ギレする。
双方が「なぜいたわってくれない?」と互いに憎む。
譲りあって考え方を少し変えればもしかしたら関係を修復できるかもしれないのにそうはしたくない。負けたくない。
それに修復に努力するよりまっさらに新たな相手を見つける方が気分が良くなるのだろう。
といってこればかりは如懿にはできないことだ。
それを思えば私たちのほうがずっと可能性はある。
少しほっとするのはこの物語が創作でなく(って創作だけど)史実に基づいているので如懿が若くして亡くなったわけじゃなく確か50代にはなっていることですね。創作だと若い頃にしたいのでせいぜい20代にまとめられてしまいそう。
逆に言えば何十年も苦しんだことになりますが。
そしてこの地獄ももう少し。
地獄が名残惜しいのもおかしいが。