ガエル記

散策

『三国志』横山光輝 第四十六巻その2-南蛮行ー

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

孔明は五十万の兵を引き連れ不毛の地、疫病の国といわれる蛮地の道をはてしなく進み続けた。野営の場所を見つけ陣を作らせていると「天子の使いがみえられました」と告げられる。孔明が勅使に会いに行くとその人物は喪服(白服)を着ていた。

来たああ馬謖だああ!孔明のお気に入り馬謖だあ。

 

馬謖は帝から成都の佳酒を預かり届けにきたのであった。喪服を着ているのは兄の馬良が出立の前に亡くなったためという。

孔明馬良の死を悼み馬謖を帷幕へ招いた。

孔明は南蛮の涼を楽しみながら酒を酌み交わす喜びを感じながら馬謖に南蛮征伐に対する意見を求めた。

「南蛮の謀反を恐れて皆殺しにするなど仁者のすることではなく不可能でもある。彼らを服従させたならばそれで充分と考えます」

孔明馬謖の考えに共感し「そなたの見識を南蛮平定のために役立ててくれぬか」と頼むのだった。

孔明馬謖。出会ったのはもっと以前にあったはずとは思いますが。

南の暑い国で過ごすふたりだけの夜。他には滅多にないロマンチックな場面となっています。(ロマンチックで思い出すのは曹操が未亡人に入れ込んだ時くらい?)

孔明馬謖の才能に惚れ込んでしまったのはこのロマンチックなひとときが作用していたのでは。

 

蛮都では孟獲孔明を待ち構えていた。

三洞の元帥らを呼び「孔明を捕えた者は三洞の長とする」と命じたのだ。

孔明にもこの報は入り左軍に王平、右軍に馬忠として進軍することにした。

同行している趙雲も今ではすっかり年配者として配慮されたのだ。

趙雲魏延はこの采配に不満だった。若輩ものなどには負けぬという気概があった。趙雲は土地の者を捕えて道案内をさせて進むことにした。これは軍規に反する抜け駆け行為だが大功を立てれば認められるという不文律が趙雲を動かした。

趙雲魏延待ち伏せて敵の斥候を捕まえ地図を描かせ道案内をさせた。

五渓峰へ進みまず趙雲は金環三結を討ち取る。

趙雲は西の阿会喃の陣へ向かい、魏延は東の董荼奴の陣へ向かった。

それぞれの陣で孔明が指示した王平馬忠の軍と挟み撃ちになり優勢に戦ったがそれぞれの元帥は逃走してしまった。

 

孔明趙雲魏延を迎え「いつもながら見事な働き」とねぎらった。

ふたりは金環三結は討ちとったものの董荼奴・阿会喃は逃してしまったと報告した。

が、孔明は「そのふたりはすでに捕らえた」と言う。

孔明は捕らえた二人の戒めを解かせて酒席へと招いた。自ら毒見をして二元帥を安心させる。

「略奪や殺戮の行為をやめさせるためじゃ。それでは良民たちは苦しむ。人の上に立つ者は領民に慕われ尊敬されなければならぬ」

孔明は二元帥に対して「事情があって孟獲に加担したのであろうがこれからは悪事に手を貸すのではないぞ」そして「のどがうるおったら自由に引き取られるがよい」と言ったのだ。

「我らをこのまま逃がすと」と驚くふたりに孔明は「悪いことさえしなければ我らは何もせぬ」と伝えた。

ふたりは平伏し感謝して「首をはねられるものと覚悟しておりました」

孔明はさらに「蜀錦のひたたれを両元帥に与えよ」と命じた。

ふたりはそのひたたれを受け取り礼を言って帰っていった。

 

二元帥が帰ると孔明は「三洞の元帥が敗れたと知ると明日は孟獲自身が攻めてくるであろう」として皆に計略を話し始めた。

 

予測通り孟獲は出陣してきた。その軍は南蛮の国々で最大の勢力を誇っている。

まずは王平がその軍と出会い忙牙張と一騎打ちとなった。

う、牛ぃ!

牛ってありかな???

 

王平は「馬鹿力じゃ」と言って逃走する。

これを見た孟獲は侮って追撃したがそこに二方向から伏兵が攻めてきた。

さらに逃走していた王平も戻り追撃する。

さしもの孟獲も退却の命令を出した。

が追撃が凄まじく孟獲軍は錦帯山へと逃げ込んだ。

が、そこには趙雲が待ち構えていた。

孟獲軍は完全に包囲され間道へ逃げ込む。そこは鬱蒼と木が生い茂り馬では進めない。馬を捨てて崖をよじ登った。

ここまで中国兵はこれまい、と崖をよじ登った孟獲の前に立っていたのは魏延だった。

孟獲は捕縛されるしかなかった。他の兵も降伏した。

孟獲は何故孔明がここまで地理に詳しいのか「裏切者がいるのか」と疑念を持った。

 

孟獲軍は捕らえられ孔明の陣へ連れて行かれた。

平伏する孟獲の兵士たちに孔明は優しく語りかける。

「そちたちは郷里に帰れば良民なのだろう。なんで無益にその命を争って捨てに来る。親兄弟・妻子は捕らえられたと聞けば血の涙を流して悲しむだろう。我らはそなた達をを殺すためにやってきたのではない。平和な暮らしを営めるようにと参ったのじゃ。よって皆許して帰そうと思う」

 

孟獲の兵士たちは皆食糧を与えられて帰っていった。

 

さて次は孟獲自身だ。

孔明孟獲を連れてこさせた。

孔明孟獲よ。我が蜀の先帝はそちを蛮王と称して目をかけたはず。その恩を忘れ魏と通じたり反乱を起こしたりその態度は何事か」

孟獲「もともと両川は旧蜀のものであって今の蜀のものではない。益州の南も元は俺の領土だった。それを玄徳が勝手に乗り込んで奪ったものだ」

孔明は「わしが縄を解いて許せば降伏いたすか」

これに孟獲は大笑し「自由になれば蜀軍を滅ぼすまでよ」

これを聞いて孔明は「よろしい縄を解いて自由にしよう」

驚く孟獲に「気が済むまで向かってくるがいい」と言ったのだ。

 

孔明孟獲の縄を解くように命じた。

さすがに皆唖然となるが孔明はなおも孟獲の縄を解くように言い本当に放してしまったのだ。

孟獲は南蛮の大頭目。このまま捕えていれば南蛮平定はいとやすく達成できるはずです」

孔明は「いや南蛮人が敵愾心を持っている間は本当に平定したとはいえぬ。心から降伏させてこそ平定したといえるのじゃ。皆もよく心得ておくように」

 

自分の陣に戻った孟獲は「檻を破り番兵を打ち殺して逃げてきた」と言い皆を心服させた。

孟獲は諸洞の将を集め中国軍と決戦じゃと命じた。

 

董荼奴・阿会喃は孔明との決戦と聞いて渋ったがそれでも孟獲の命令には背けない。他の将たちは続々と詰め掛けたちまち十万以上の兵が加わったのである。

 

諸洞の将を集めた孟獲は計略を伝えた。

「蜀の兵は強行軍で慣れない暑さと土地の険しさにへばっている。濾水の向こう岸に渡りけずり立った山に沿って頑丈な防塞を築く。いかに孔明といえどこれでは手出しできまい。蜀の兵がへとへとになるまで待ち皆殺しにするのじゃ」

「なるほど。害虫と毒蛇が蜀の兵を襲ってくれますわい」

 

一夜にして孟獲の軍が姿を消した。

孔明は南蛮を平定するには前進あるのみじゃ、とただちに前進を命じた。

だが蛮地の紅軍は並大抵ではない。毒蛇、大蛇、沼地では蛭が、害虫の襲撃にも会う。

そして灼熱の中、疲れ果てた蜀の先鋒部隊が目にしたのは大河濾水の対岸に延々と長城の如く連なる南蛮軍の防塞であった。

 

疲れた~~~~。

南蛮編は大変だわ。この暑さにもめげない孔明の地道な努力。おそるべし。

しかしこの土地で孔明馬謖に偏愛を持ってしまったのだなと思えました。