ガエル記

散策

『サンダー大王』横山光輝

「巨大ロボット&少年」シリーズ。

 

ネタバレしますのでご注意を。

横山光輝氏巨大ロボットの魅力は計り知れない。

 

しかし何も知らず読み始めたので最初変な男の命令を聞いて「サンダー大王」が動き始めたのを見て


「あれ?別展開かな?」と思ったのだがやはり登場したのは少年だった。

(ま、表紙に出てるしね)

なんとアトランティス生まれで生き残りでもある少年、名前はシンゴ。もちろん熱い正義の心を持つ。

いきなりアトランティスの守護神である「サンダー大王」を強欲で貧弱な男に奪われてしまうところから登場するのだがなんとしてでも「サンダー大王」を奪い返すという意気込みがある。

そこへ無敵のサンダー大王が欲しくなった国、組織が絡んでくるという展開になっていく。

このあたりちょっとした複雑な進行でもあってやっぱ横山光輝は一筋縄では描いていかない面白さがある。

 

しかし今回の少年はかなり幼げだ。掲載誌が『冒険王』だったので小学生向けではあるのだろうけど『ダイモス』の真介くんより年下のように思える。

そのためか彼には保護者がついて回る。

その保護者がステンガー。

サンダー大王を奪取するという指令を受けた司令官として登場するがアトランティス人の生き残りであり懸命にサンダー大王を取り戻そうとしまたその秘密を知った彼は国を裏切り死刑になっても構わないという意気込みで少年シンゴを守っていく、こちらも熱い正義の心を持ったおじさんだ。

 

子供向け雑誌掲載のためか敵となる大人たちが意外に物分かりが良くあっさりしているのでストレスはたまらない。

 

ところで現在はかなりグローバルになってきているが昔の少年マンガはかなり閉鎖的でいつも日本が舞台だったものだが(なぜか少女マンガは昔の方がよりグローバルだった)本作品は1971年作としては他になく世界的な舞台で珍しかったのではないだろうか。

主人公少年がアトランティス人(?)なのに「シンゴ」という日本人的な名前になってるのがかつての少年マンガの日本固執を物語っている。

とはいえ保護者がステンガーという名前で無理やり日本人にしていないところは横山先生のこだわりだったのか。

それでもサンダー大王を動かす鍵である「黄金のカブトムシ」を購入したのが日本人でシンゴたちが日本へやってくるという運びになりサンダー大王と戦った鋼鉄のドラゴンが東京湾のヘドロに沈む、ことになる。

少年誌ということもあってか女の子がちょっとかわいく描かれてる(ここだけだけど)

日本人山田氏も善人であることを示しててよかった。

 

余談だが、この「東京湾のヘドロ」という文字は1970年代を過ごした日本人は嫌でも目にした耳にした言葉だ。ヘドロを怪獣化した『ゴジラ対ヘドラ』ほどおぞましい怪獣映画はないだろう。

先だっての東京オリンピックの時も東京湾が嫌な話題になってしまったがほんとうに恐ろしい。

 

さてそのかなり富裕な感じの山田邸に泊まったシンゴ&ステンガーだが。

ステンガー司令官とシンゴくんが同衾しているところをさりげなく描く横山先生。

しかし萌え場面はここではありませぬ。

この後こっそり抜け出して自国へ連絡をとるのだが、そこでステンガーはU連邦のピラポレスらに拉致されてしまう。

ステンガーを人質にしてシンゴを脅迫しサンダー大王を奪い取ろうという計略なのだ。

この罠にはまりピラポレス屋敷に連行されてきたシンゴを見たステンガー

どうするのかと思いきや

いくらなんでも!

ステンガーは大佐、軍人ではあるのだが、年齢を考えよう。しかし胸を打つね。うう。

いわんこっちゃない(´;ω;`)

このシンゴくんがかわいい。おじさん、老骨に鞭打つ。

ぬぬ、やりおる。伊達に大佐ではない。右、男の手がイヤラシイです。

 

こうしてステンガーはシンゴのために死刑になる覚悟をした。泣ける。

 

この後ステンガーはシンゴに気持ちを打ち明ける。シンゴはステンガーを受け入れる。

こういう対等な感じが良い。

 

こうしてシンゴとステンガーはサンダー大王を静かに眠らせるために様々な敵と戦っていく。

なにこの熱い感じ。ステンガーめちゃ喜んどる。シンゴおされぎみ。

この巨大ロボットの手に乗る、っていうのは憧れ。

でも幸せな感じで祝福されて旅立つふたりとサンダー大王。

えええ、どゆことよー

いいのか????

 

つまりこれもはウェディングハピエン???

 

不思議な終わりである。

 

 

そういえば『殷周伝説』もそんな終わり方だったなあ。

 

めでたしめでたし。