この文庫本表紙は白土三平氏の筆による。
何故外伝から書き始めるのかというととにかく『カムイ外伝』が大好きだからです。最初はアニメでその存在を知り最高にかっこいいと感じ今に至ります。
白土三平を語るとか恐ろしいような敷居が高いような気もしてしまうのですが、別に何の背景知識もなくただただ「かっこいいなあ」というだけの文章を思うままに書いていくだけです。
私が持っている本は文庫本やら単行本やらデジタルやらまちまちですがそれで通していきます。
ネタバレしますのでご注意を。
第一話 雀落とし(1965年4月16日)
白土三平の絵の上手さを書いていたらキリがないのだけどもうほとんどそのまま動いて見えるこの描き方はなんなんだろうか。
首領によって三人の忍者に「裏切り者となったカムイを消せ」という命令が下る。
探し出せないまま日を送る三人の前にみすぼらしい風体の男が現れる。
暇つぶしに雀を落とす忍者の前でその男は酒につけた麦を撒いて大量の雀を捕獲して見せた。
その男こそ探していたカムイだったのだ。
三人の忍者相手に変異抜刀霞斬り、そして相打ちをさせることでカムイは逃げ延びる。
マンガの合間に神の声のごとき作者の説明が入るのが面白い。
カムイの美しさもいったいどうしてなのか、といつも不思議になってしまう。
第2話 飯綱落とし
私が「ロプロス」はここからと言ってる所以。
まずは「犬万」の説明。ネコに対するマタタビのようなものらしい。
これを使って犬とたわむれるカムイの前に追手が現れる。犬を傷つける追っ手を睨みつけるカムイ。カムイは動物好きなので動物を殺す人間には容赦しないから気を付けるべし。
すばらしい構図。
ためいき。
ここでカムイは変異抜刀霞斬りを披露するのだが
と丁寧に教えてくれる。
この回はカムイがどんなにすばらしい技術を持っていてその技が美しいかを教えてくれる。しかも一般人にはまったくわからない静寂の中で死闘が繰り広げられるのだ。
このポーズがカッコよく描ける技
ここから飯綱落としが行われる。
私が思う「ハードボイルド」究極の世界。
とはいえこれ、娑婆に生きるすべての人間が担うものなのではないかと思える。
誰しもが「死にたくない」ために様々に迫りくるもの(税金とかね)と戦いながら逃げ延びるハードボイルド世界に生きているのだ。
変異抜刀霞斬りや飯綱落としを編み出しながら生きぬいていくのである。
第三話 月影
コウモリでさえひとたまりもない隠月(インゲツ)の術を使う月影に追われるカムイ。
犬万を使いカムイを殺そうとするがカムイは逃げおおせる。
こういう動物好きなカムイ、描かれた当初より今の時代の方がより共感されるのでは。
しかし月影の攻撃をうけてハヤテは死んでしまう。
カムイは月影に飯綱落としを仕掛け仇をうった。
ハヤテが好きだったカジカを刺してお墓を作る。
第四話 むささび
月影を「おじさん」と呼ぶ忍者姉弟が登場。これが「むささび兄弟」と呼ばれている。
ふたりは仲良く忍術で遊んでいたがおじの月影がカムイの飯綱落としで死んだことを知り仇を討とうとする。
飯綱落としは高い木の枝から繰り出す技と考えたふたりは平地でカムイと戦うがカムイは平地でも使えることを証明する。
カムイはちょうどその弟が気まぐれに殺した鷹の雛を見つけハヤテの代わりに育てようとしていた。
こういう場面がよく出てくるのだけどカムイのふくらはぎがかっこいいんだよなあ。こんな簡単に描いてるのに。
ちなみに平地だけど飯綱落としがやれたのは左側にある小さな木にぶつけたからなのだ。
弟・四郎は死にはしなかったが頭がおかしくなってしまう。
姉は必ず仇を取ると決心しながらもカムイ以上の技は考えられない。が、狂ってしまった弟が偶然放った技を見て「飯綱返し」を思いつく。
姉は黒装束をまとい果敢にカムイに勝負を挑む。
あえてカムイに飯綱落としを仕掛けさせ自分自身を刀で貫きもろともにカムイを刺そうとしたのだ。
が、その刃はカムイの身には届かなかった。カムイは鎖帷子を身に着けていたのだ。
「術者はおのれの秘術を編み出した時、その術を破る方法も考えるものだ」
カムイはまたも逃げおおせた。母を亡くした雛を抱いて旅を続ける。
第五話 五ツ
このエピソードは白土三平の特色を強く表しているだろう。
左側の男「名張の五ツ(いつつ)」はもう一本の腕を持つ。それゆえギリギリの戦いを繰り広げる忍者の技の中で両手を使いながらもう一本の手で相手を仕留めることで生きぬいてきたのだ。
ふたりは戦うが引き分けとなる。カムイにとって変異抜刀霞斬りが破れたのは初めてのことだった。それはもう一本の腕があるからこそだったのだ。
カムイは「おいらは非人ゆえに忍びとなった。おぬしの気持ちもわかるぞ」と心に思う。その気持ちを五ツは感じ取る。
五ツもまた抜け忍の道をたどることとなったのだ。
こちらはフクロウ。かわいい。
最後にカムイは珍しく五ツに手を挙げて挨拶する。
そして作者による
「現実には、様々な形で差別が残され能力を抑えられひねくれさせてゆく。こんな時代遅れなことは早くなくしたい」
という言葉で締めくくられる。
第六話 木耳
崖から伸びた木の枝に木耳がびっしりとついているのを見て年寄の坊さんが食べたさに命懸けで摂ろうとするが足を滑らしわずかしか取れなかったと嘆く場面にでくわすカムイ。
カムイのこのスタイル、憧れてしまう。やってみたい。
だが二代目ハヤテは大きな鷲に襲われ死んでしまった。恨むカムイはその鷲を殺すが足に輪が付けられていると気づく。
というところで時間が来てしまった。
特にこの「木耳」はじっくり書きたいので次回にもう一度書いてみよう。
続く。