『闇の土鬼』を読む前の予行練習です。
ネタバレしますのでご注意を。(『闇の土鬼』についてもネタバレあり)
本作『暗殺道場』(1969年)は後に描かれた『闇の土鬼』(1973年から)のモチーフになった、と記されている。
『闇の土鬼』は読了しているが再読のためまず本作を読んでいく。
表紙からしてはっとしてしまうのは同じ容貌なのに主人公が片目ではないことだ。
そして同じ容貌と書いたけど土鬼よりも明るく可愛らしい表情をしている。逆に言えば土鬼になると陰りのある寂しげな主人公になっているといえる。
ここで話しておくと『闇の土鬼』そして本作を読み始めたのも白土三平忍者作品と横山忍者作品との違いを感じたかったせいもある。
『伊賀の影丸』とは立ち位置が違う『闇の土鬼』は『カムイ外伝』に近寄っている、というか土鬼とカムイが近いイメージなのだけどそれでも明確に両氏の作品が似ている気がしないのは横山光輝マンガが徹底して少年マンガらしい面白さを追求しているからなのだろう。
少年マンガの醍醐味は極端に走るため生まれる笑いと真剣さにあるのだけど横山マンガはそこを貫いている。
天真流道場の四天王である四人の男たちは道場主から秘術を授かりその腕前は道場主を越えるものとなっていた。
四天王は腕試しに四人の武芸者を殺害し次は道場主を狙う。
道場主は養子でもあり特に目をかけて育てた鷹丸にそのことを伝えもしもの時は隠している手紙を読んでくれと頼む。
予告どおり道場主が暗殺される。
鷹丸が読んだ手紙には「我々の天真流を抹殺してくれ」と書かれていた。
道場主から秘術を授かった四天王は徳川幕府から暗殺を請け負っていたのだ。
それは天真流が暗殺に適した技術を持っていたためだった。
養父である道場主は四天王を討ち暗殺剣となる天真流の抹殺を鷹丸に託したのである。
世の正義のために殺人を遂行しなけらばならない、という遺言。
道場主であり養父を越える力を持つ四人の男が敵となる。
たったひとりの鷹丸はこの四人の強敵を倒さねばならないのだ。
うーむ。
どう考えてもおもしろくなる。
少年マンガの鉄壁フォーマットではないか。
鷹丸は一度四人全員と戦い傷を受けてやむなく逃亡。
手当てをしようと入った小さな社で知り合ったスリの男・銀次を手下にして鷹丸は四天王と戦っていく。
横光ファン、こういう変な技を持つ人が面白すぎて止められなくなるのでしょ。わかる。
そして主人公がボロボロになっていくのが好きなんでしょ、わかる。
このフォーマットは『マーズ』にも使われている。
だが鷹丸の使命は養父の遺言を守ることだ。
四天王を倒しそして自分自身が剣の道を捨てることでその使命を果たす。
終りは横山作品に多い「そのままいずこともなく姿を消した」である。
さてこれで次回からは『闇の土鬼』に入ります。