『闇の土鬼』を読める幸せ。
ネタバレしますのでご注意を。
『暗殺道場』でも書いたのだけど横山光輝が生みだした氏独自のマンガの魅力というのは文章で説明できるものではない。
読んで味わって初めて体感できるものなのだ。
横山光輝忍者マンガが白土三平忍者マンガから影響を受けてはいるのだろうけど(土鬼のビジュアルもカムイの影響は否めない)マンガのスタイルや演出は横山光輝独自のものだ。
作品からにじみ出てくるカッコよさとおかしさ、男らしさと人間味は比類なきものだ。
しかも横山氏が作り出したスタイルは少年マンガのフォーマットとして今も受け継がれている。
なのにこちらの方はあまり認知されていないように思えてならない。
土鬼の過酷な生い立ち。
ヒーローには必ず過酷な生い立ちが必要だ。
すぐに思いつくもので『スーパーマン』のそれであり萩尾望都『ポーの一族』の主人公エドガーが妹と一緒に捨てられたのを吸血鬼一族に拾われ育てられたことを思い出す。
『闇の土鬼』では土鬼が親によって土に埋められ強い生命力のためになかなか死なないのを鍬で叩かれて片目を失ったことが描かれる。(そして赤ちゃんがすごく可愛いのも横山氏の重要なポイント)
『暗殺道場』での鷹丸はこの部分がない。
強いヒーローが片目つまり体の一部を欠損している、というのは特に日本のヒーローに多く存在してきた。横山氏には片目の主人公が何人もいる(みんな大好き夏侯惇も)
なぜか惹かれてしまう魅力があるのだ。
『暗殺道場』と同じく主人公は養父に育てられている。
養父は「血風党」という幕府とつながる暗殺集団を脱党し追われる身だった。老人に身をやつし町道場を開き拾ってきた土鬼にその技を注ぎ込んだ。
土鬼もまた優れた能力で技を身に着けていったのだった。
『闇の土鬼』では養父とのつながりがより詳細に描かれている。二次創作的にはこの養父と土鬼が成長していくまでを想像してみたいものだ。
「花見がてらに散歩でもするか」は楽しい。しかしそこで再登場する虚無僧の怪しい尺八の音。
なぜ並んで尺八吹くのか。
ここを笑わずに読める人いるのか。
現在の人、虚無僧知ってるのか。
様々な謎と笑いが交錯してしまう。
こちらの父子の様子も楽しくてむずむずする。
そしてついに虚無僧集団が父を襲う。
しかしこの需要な時に土鬼は買い物に行ってるという・・・ここは笑えないよお
強者の父も討ち取られ
ずっとカツラで過ごすの大変だったろうに。
(白髪に染めるのは駄目だったのかな)
死の間際父は土鬼のほんとうの生い立ちに伝え、血風党独特の「裏の武芸」の完成をお前に期待していた、と言い残す。
こうして土鬼は父の遺言ともいえる血風党の「裏の武芸」を会得せんと誓うのだった。
まずは血風党を知ろうとして「仕込み傘の伝蔵」に近づく。
かっこいい~~~
しかし伝蔵は歯に仕込んでいた毒で自害。聞くことはできなかった。
次は和泉屋。土鬼はここから旗本の山辺十郎を知る。
そしてそこを訪れたことから血風党の一味と相まみえる。
みんなが土鬼好きになるのわかるよ。
絶対殺すマン。
土鬼は着実に血風党へと近づいていく。