ガエル記

散策

『三国志』再び 横山光輝 三十九巻

趙雲の巻ですね。

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

 

食糧庫であった天蕩山を奪われたとあって曹操はついに自ら四十万の兵を率いて出陣した。

この報を聞き夏侯尚は喜び勇んで黄忠を捕えようと打って出た。

張郃がいくら諫めようと聞く耳は持たない。

 

しかしここで黄忠側の将・陳式が捕らえられてしまう。

黄忠は法正からの指示を仰ぎ陣を一歩一歩進めることで夏侯淵の焦りを引き出した。

夏侯淵は甥である夏侯尚を黄忠陣へ差し向けるが今度は夏侯尚が捕らえられてしまい両軍は人質交換をすることとなった。

三つ数えて人質を放しふたりがすれ違ったところで両軍から矢が放たれた。

陳式は逃げおおせたが夏侯尚の背中には弓の名人である黄忠の矢が突き刺さったのである。

さらに黄忠と法正は話し合い魏軍の定軍山の側により高くそびえたつ高山を奪い取ってしまうことで夏侯淵をおびき出した。

そしてここで黄忠夏侯淵を討ちとってしまうのだ。魏軍は乱れに乱れた。

さすがに張郃も味方の援護に打って出るがこの隙に劉封孟達軍に本陣を奪い取られてしまったのである。とうとう魏軍は天蕩山に続き定軍山も奪われ命からがら漢水へ落ちのびていくこととなった。

 

夏侯淵の首を得たことは大手柄である。玄徳はその功を褒めたたえ黄忠を征西代将軍に封じた。

 

とにかく黄忠が強い強すぎる。

この後も黄忠趙雲と組み曹操の食糧庫を焼く、という大手柄をまたも立てる。

強い、というか体が丈夫だ。こんなに続けざまに働いたらばててしまいそうだがばてないのがこの爺様将軍である。

 

そしてこの後、あの「全身肝っ玉」の趙雲の活躍となる。

曹操軍二十万に対しただ一騎で立ち向かう趙雲

そして劉封孟達の手によって曹操の陣が次々と焼き払われてしまった。

曹操はやむなく大量の物資を残したまま南鄭まで軍を下がらせるしかなかった。

 

曹操は軍を立て直し改めて徐晃王平をつけて出陣を命じる。

ところが徐晃が背水の陣をたてたことから王平徐晃の作戦に疑念を持つ。

徐晃王平の反論に苛立ちながら打って出るが大敗を喫してしまう。戻ってきた徐晃は援軍を出さなかった王平に怒りをぶちまける。

王平は将来を案じて蜀軍へ降ることを決意し手みやげにと陣に火を放ち趙雲の陣へと向かった。趙雲は玄徳に王平を会わせる。王平は地理に詳しい。魏軍の郷導使であった。玄徳は王平をそのまま蜀軍の郷導使としたのである。

 

孔明王平に案内をさせ地理を利用した作戦を編み出していく。

漢水の上流に伏兵をするに絶好の場所があり趙雲に兵を連れ角笛太鼓を持ってそこへ隠れさせた。

夜中、火矢の合図で趙雲は兵士たちに太鼓を叩かせ銅鑼を鳴らせた。

就寝中の曹操は目を覚ましどこからか鳴り響く銅鑼太鼓の音に敵の来襲かと案じる。

だがどこにも姿は見えない。

再び太鼓の音が響き魏軍は夜通し駆けずりまわったが盆地で打ち鳴らされている太鼓の音が山にこだましどこで鳴っているのか見当がつかなかった。

この騒ぎは三日三晩続いた。魏兵はすっかり寝不足になってしまった。

やむなく曹操は見通しのきく平地まで陣を後退させた。

 

孔明は玄徳に説いた。「曹操は自ら兵法書を書きました。智者はかえって智に溺れるといいます」「すると何か我々に謀略があると見て」「さようでございます」

 

そして孔明は玄徳に背水の陣をとることを勧めた。これも曹操が深読みをして不安に駆られるのを予見したのである。

 

さて、かつては手を組み親しく交わった時期もあった玄徳と曹操がこの地で再び相まみえることになる。

曹操徐晃に攻撃を命じたが自軍が優勢にもかかわらず引き揚げを命じる。

孔明曹操が考えすぎるようになっているのを見た。

蜀軍は三方から魏軍にうってかかり魏軍は総崩れとなる。

曹操は全軍を南鄭へと引きあげさせたがそこにはすでに火の手があがっていた。

城にはすでに張飛魏延の傍が立っていたのだ。

曹操は陽平関へと退却した。

孔明は手を緩めず張飛魏延に曹軍の食糧補給路をすべてふさがせ、たきぎが手に入らないよう山に火を放させた。

 

ここで許褚が食糧運搬の命を受けるのだが久しぶりに酒を勧められ痛飲してしまう。

許褚は酔った勢いもあり夜更けに食糧を運んだがこれを阻止したのが張飛だった。

さしもの許褚も酔いには体が動かなかったのだろう。張飛の槍で刺され落馬してしまう。兵士たちにまもられなんとか乗馬しなおし逃げ延びるしかなかった。

張飛は深追いしなかった。

追おうとする兵たちを止め「我々の目的はこの食糧じゃ全部いただいていこう」と帰っていったのである。

 

いつも思慮深い許褚が珍しく酒の失敗。しかも相手が張飛という皮肉な失敗だ。

とはいえ許褚はこれで曹操に嫌われるわけでもなくずっと仕えているようで安心した。いや安心する場面じゃないんだけど許褚ファンなので。