ジョージ秋山原作のアニメ化作品です。
当時は無論今になっても原作マンガをきっちり読み込むことができない小心者の私なのです。チラリちらりと見て恐ろしくて逃げてしまいました。部屋の中にはあるのですが。
その原作『アシュラ』を良しとされた方のレビューはおおよそアニメに残念感を持っておられるようですが私のような軟弱者にはとても共感できる仕上がりとなっていました。
とはいえジョージ秋山の凄まじさと比較して、のことですので初体験された人であれば震え慄く内容ですし、人間ならばそうであるべきだと思います。
以下ネタバレになります。
「飢えれば人間は人間の肉を食うだろうか」
というのが本作の題材になっています。
これは趣味で食べてしまう(レクター博士のような)意味合いとしてではなく、禁忌として人肉を食べるなどありえない、としている者でもガチで飢えた場合には人肉を食ってしまうのだろうか、という問いかけです。
これをそのまま「人の肉を食う」と観ることもできますし、「己の利益のためなら非人道的なことができるのか」という問いかけの変化として観ることもできると思います。
例えばある仕事、ある作業が人命にかかわることであってもそれを無視して行うことができるのか、という問いかけでもあると思います。
特にこのアニメ化作品は原作よりも人命を損なうことへの罪の意識への問いかけを主軸にしているのではないでしょうか。
実は私自身オリジナル作品として人狼の物語(小説&マンガ)を描いているのですが、この人狼が悪行の道に入った時に「人肉を食ってしまう」という罪を負ってしまう設定になっています。
人狼は幼い時は老人から愛情を受けていたのですが、そこを飛び出し堕落するうちに愛情を失ってしまいます。その時彼は人肉を食ってしまうのです。
その後、人狼はかつて友情を感じていた人物と再会し再び愛情を取り戻した時、人肉食を止めるという筋書きなのですがまったく違う話とは言え、本作に共通する構成を感じました。もちろん愛情を知った時に罪を認め贖罪への道を歩む、というストーリーはごく自然な大道と言えるものでしょう。
私も自分が生み出した人格にそうした道を選択してほしいと願ったのです。
原作はアシュラが自分を苦しめた母親を許し、それでも「生まれてこないほうがよかったのに」とつぶやく場面で終わっていましたが、アニメ作品のラストに救われた思いです。