ガエル記

散策

『邪神グローネ』横山光輝

横山光輝作品タイトルを眺めていて気になったのだけどebookにはなかったので古本『セカンドマン』(大都社)に収録されているのを見つけて購入しました。おかげで『セカンドマン』を紙の本で読むことができますw

となると気になるのは例の場面!「もしかしたら裸のままの場面が見られるのでは」(いやそれほどじゃないんですけど)と邪な(こっちが邪心だ)考えですぐにチェックしたのですが「げえっ」なんと逆にデジタル本ではあったまさに裸の場面が削除され巧妙な手口でつなげられておりました。(いやあの時ひらさんがそう教えてくださっていたはずですがこの本がそうだったのか)

やはり邪心を持った人間は痛い目を見ます。

 

いやいや今回の本命は『セカンドマン』の少年の裸じゃなくてあくまでも『邪神グローネ』ですよ。

ではネタバレしますのでご注意を。

 

 

『邪神グローネ』(1977年「小学6年生」掲載)

冒頭1978年明神礁の海底火山噴火から物語が始まる。

横山作品、島の火山噴火設定やたら多いなと今頃になって検索したら1973年に西之島噴火とあってこういう実際にあったことが作品の手掛かりになってるんだなと改めて感心したりする。

美しいマーズが噴火した島に立ってる構図は印象的だった。

本作では美少年ではなく、蛇が生えているような頭がふたつ重なっている不気味な神像が発見される。

それが表紙の少年の背後に在るものだ。

少年の名は春彦。年齢は掲載誌から小学六年生11~12歳と思われる。

父親がその「発見された神像」を保管している博物館の館長で年齢もそれなりに高そう(50代ではあるだろう)でかなり年を経てからの子どもと察される。それもあってかすごく可愛がってる様子だ。

父子が食事に行こうとすると神像の前で熱心に観察している男がいた。

名を須本というその男は館員で悪魔を信じており悪魔の蔵書に関しては学者顔負けだと館長である父親は説明した。

 

須本は蔵書を読みこの神像こそ「邪神グローネだ」と確信する。台につけられた封印をはがし四人の生き血を与えれば悪魔としてよみがえると知った須本は真夜中博物館に戻り封印となっている文字盤をはがし始める。

その様を警備員に見つかってしまった須本は「これをはがして学者に調べてもらうと命じられていたのを忘れていた」と巧みに嘘をついて警備員に手伝わせる。

ついに文字盤が外れ神像の目が光る。

 

翌朝館長は急いで博物館へ入った。ふたりの警備員が殺害され一滴も残らず血液を失っていたのだ。

須本はその様子を伺い皆が去った後に邪神グローネに「あなたの忠実なしもべになりあと二人の血を捧げます。私に魔力をお授けください」と願うのだった。

 

館長は自宅で届いた手紙を読んでいた。

春彦の問いに答える。

エジプト博物館のアルハザード博士から「これは邪神グローネではないか」と返事があったのだ。しかしそれ以上の詳細を知るためには「メコロニア」という地球上に一冊しかない本を見つけるしかない。

館長はそれをどこかで見たという記憶があったが思い出せない。

春彦は「学者顔負けの蔵書を持つという須本さんのところでは」と助言する。館長はすぐさま須本の家に向かう。

 

無論この後館長は須本に襲われるも命はとりとめ(グローネに生き血を与えるために殺さなかったのだろう)父親を心配して須本の家に来た春彦に呼びかけられて目を覚まし警察を呼ぶ。

 

おもしろいのは悪魔の力を切望する須本だ。ある意味デビルマンになりたがっている男なのだが悲しいかなグローネが生贄を待ちきれず須本の生き血を吸い始めてしまうのだ。

そこへ到着した館長と春彦。文字盤で封印しようとした館長はグローネに阻止されてしまい春彦に文字盤を託す。

グローネの頭の蛇に「それ以上近づくとお前の命はない」と脅されながらも文字盤を台座に張り付けた。

 

館長は息子の勇気を褒め称え邪神グローネをしっかり封印してコンクリート詰めにし元の深い海に沈めることにした。

(沈めるために海に運び出された、というところで終わっているのが巧い。続編が描ける先生)

 

ううむ。これは横山版少年の『エクソシスト』というべきか。

エクソシスト』(1973年)(これも73年か。噴火と言い悪魔と言い)も出だしが悪魔パズズイラクで見つける場面から始まる。

悪魔との戦いを予兆させるのだ。

映画『エクソシスト』では少女が悪魔にとりつかれてしまうが横山版は少年が悪魔を追い払う。微塵も怖がらず突き進むのがたのもしい。

そう言えば私も子供の時に『エクソシスト』を観て「もっときっぱりやっつけられないものかな」と不満に思った。(いや今ではそんなことできないと思うよ)(すばらしい映画です)

子どもだからこそ突き進めてしまうのかもしれない。

 

『邪神グローネ』キリスト教徒とは違う切りこみであり戦い方になるのだ。