この傑作選の中でも最も素晴らしい一編だと思っています。
原作でも何度も本作マンガも何度も読み返しました。
ネタバレします。
特別な説明はされないのだけど主人公ティモシーの一族とその仲間たちはいわゆる魔族というものなのだろう。
彼らは夜に行動し毒キノコやトリカブトを好み様々な魔法を特技としているらしい。
人間の身体、血液も彼らの嗜好品となっているようだ。
そんな一族の中でティモシーは「落ちこぼれ」なのだ。
闇が怖く毒キノコは食べきれない。体が弱く空を飛ぶことも魔法の力も持っていないのだ。
一族のものは皆ティモシーを馬鹿にして笑いものにしているがエナー叔父だけはそんなティモシーに優しかった。
ティモシーを空に放り上げ彼にはない翼がはえてくるかのような浮遊感を味わわせてくれるのだ。
しかしそれでもティモシーは魔族の中のやっかいものでしかなく彼自身そのことを恥じていた。
それに比べ妹のシシィは見事な魔術を駆使することができた。
身体はベッドに休ませたまま魂を飛ばして様々な悪戯をして遊ぶのだ。
そして久しぶりの魔族の集会でいつも蔑まれれているティモシーの中に入り彼を操縦して一流の魔族の少年として振舞ってみせた。いつもと違う魔族の彼に皆は呆気にとられて見つめ彼に見惚れた。
だがティモシーが空を飛んだ時にシシィがするりと抜け出したせいで落下しエナー叔父に抱き留められて事なきを得た。
「これ、シシィです。シシィがやったんです」
皆はドッと笑い二階で寝ているシシィにキスするために駆けあがっていくのだった。
惨めなティモシーを残して。
エナー叔父はティモシーに近寄り彼を抱き上げた。
「怒るんじゃないよ。誰でもそれぞれの生き方というものがある。一番少ない生き方をする者が一番豊かに生きることになる。価値が少ないなんて考えるんじゃないよ」
集会の夜が終わり魔族の皆はそれぞれの居場所へと帰っていった。
母親はティモシーを優しく抱き寄せ「おまえがどんなに変わっていても愛しているよ」とささやきかけた。
ティモシーは重い足取りで階段を上っていく。
魔族の変わり者というお話。悪いことができないティモシーはその肩身が狭いのだ。
母親とエナー叔父が彼の救いではあるがそれでも悲しい終わり方である。
逆にそのことがちょっとおかしくもあるのだが。
悪いことができないから仲間外れなんてね。
でもティモシーには共感できる。
誰しもシシィのように小気味よく能力を駆使したいものだ。
そしてエナー叔父のように包容力ある大人になりたい。
『集会』ほんとうに奇妙な短編なのだけどこの傑作選の中だけの範疇でなく大好きな一遍なのだ。
レイ・ブラッドベリ「10月はたそがれの国」『集会』挿絵
萩尾望都氏が『集会』の中で描かれている家はこのデザインからだと思う。