The Final Seasonアニメも始まりもう一度これまで出たマンガを読みなおしていました。
なお私が読んでいるのは単行本になったものだけで雑誌掲載は読んでいません。
『進撃の巨人』はいろいろな意味でこれまでにない価値のあるマンガ作品として歴史に刻まれるのはすでに決定していると思います。
初期はまだ特別に優れてはいても少年マンガらしい主人公の成長物語と思えたのが進行するごとにそれだけでは済まない深みに入り込んでいきました。
諌山創氏の絵に関しては誰もが「あまり巧くはない」と指摘することになるのですが、一方デザイン能力は秀でている、という特殊なアンバランスさがあります。
登場人物の数はおよそ数えきれるものではありませんが主要キャラクターだけでもかなりの人数になります。
それらのキャラクターデザインがかなり明確に描き分けられているのは驚きに値します。しかも突飛な髪形や造形ではなくリアルなデザインの中で描き分ける力はマンガ家でも稀有だと言えます。
特に少年マンガで女性を描き分ける能力は諌山氏が突出していると思えます。
絵の技術が高くないのに特別に描写が上手い、のです。
コミック一巻の絵を見返すとこれもまた驚くほどさらに稚拙に見えるのですがデザイン能力は極めて高いのです。
以下はネタバレになるかもです。
『進撃の巨人』の特別性はまず女性の描き方が他作者とはまったく別質だということです。ここまで突き抜けた作品は初めてと言っていいのではないでしょうか。
ファイナルになっての驚きはやはり「ガビ」という少女です。
馴染みになってしまった初期キャラクターによる物語がいったん中断して新たなる展開のヒロインともいえるのが彼女ですがこれが凄い猛者でありました。
これまでも少年マンガ界は女性キャラを性的なサービスとして位置付けてきました。
これは御大・手塚治虫氏自ら「マンガの描き方」という本ではっきりと書かれていたことですから後輩者が従うのももっともかもしれません。
諌山氏も意識としてはそうなのかもしれませんが描写としては他の作家たちとはまったく違うものになっています。
ミカサ、アニ、ハンジ、ユミル、サシャといった初期女性キャラたちは皆強者ばかりでしたし、唯一可愛いキャラとして登場するクリスタ=ヒストリアは「一番悪い子」になる宣言をしてしまいます。
エレンをはじめ男キャラたちはその周りをおどおどうろうろしているようにさえ見えます。
新展開からのガビはミカサの強さとサシャむしろハンジの滅茶苦茶さを兼ね備えていますし、ピークの冷静さも着目ですが女性キャラを車力の巨人にしてしまう感覚も諌山氏特有の判断です。
そしてイェレナ。美貌であるのに男性と思わせる、という設定はやはり少年マンガの中では異質なのです。