ガエル記

散策

『鉄人28号』横山光輝 その6

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

やはり私にとっては鉄人よりも金田正太郎クンが気になり読み続けてきました。

前にも書きましたが正太郎クンは現在の「ショタコン」そして単に「ショタ」という表現も当たり前に使われるようになってきた言葉の語源の存在です。

一応説明すれば「ショタコン」は「ロリコン」の対語。成人が幼い少女を愛することをナボコフの『ロリータ』にちなんでロリータコンプレックスロリコンと称したのに対し成人が幼い少年を愛することを日本では「ショタコン」と称したわけです。かつてはロリコンに比べかなりマニアックな呼称だったのが今では当たり前になってきた感があります。

小さな男の子のことを普通に「ショタ」とも言うようになったのではないでしょうか。

この語源となったのが『鉄人28号』の金田正太郎クンなのだと聞いた時は何故他の少年ではなく正太郎クンなのかとも思いつつ確かめもせず今まできてしまったのですが今回初めて読んでみて非常に納得した次第です。

美少年、というより可愛い男の子、という感じ。純粋で正義感に満ちまっすぐな男の子らしさも大人の心をくすぐります。かといって乱暴者ではない上品さもあります。

ややこしい名前でもない正太郎という響きも良い。

正太郎クンの髪形服装も際立っています。ちょっと癖のある髪を短くしてて服装はフォーマル。

現在ではそこまで別格な装いではないのかもしれませんが発表当時1956年ころと言えば戦後やっと11年ほど。正太郎クンの服装はかなりお洒落な感じだったのではないでしょうか。いや今でも普段からこの服装の男子は珍しいですけどね。

 

それにしても長い連載中に正太郎クンも変化します。

五巻の正太郎クン

 

22巻の正太郎クン

むしろ子供っぽくなってるw

やはりかわいい感じが求められたのでしょうか。

これも22巻時


そして常に成人男性と一緒にいるのが正太郎クンです。

同年なのは最初だけ出てきた敷島鉄雄クンくらいですし女性関係は母姉妹友人上司などでもまったく感じれれないのが彼です。

手塚治虫だったらお母さん、石ノ森センセだったらお姉さんを必ず出しただろうし(いや勝手な思い込みですが)ガールフレンドの一人くらい出してもよさそうなのに横山マンガのこの女性のいさな加減は徹底してます。少女マンガで可愛い女の子は描いていたのになかなか謎です。

正太郎クンに一番近しいのが大塚署長

二番目が敷島博士ですね。噂の村雨健次はそれほど登場しなかったので少し残念でした。

 

23巻、昔流行ったモンタージュ写真が表現されていたので面白くてはりつけました。

こういったものも重要な歴史証拠ですね。

モンタージュ写真は映像としても面白いので映画などでもよく使われましたが実際の効果が薄かったようで短期間で中止になったようですね。やはり目撃者から聞き取りながら似顔絵を描く方がより似通った絵になるようです。

将来は頭の中で思った画像が取り入れられるようになるかもしれません。そういうの見てみたいです。

 

さて『鉄人28号』原作完全版24巻にて完結です。

これがまた唐突な終わり方でした。

ふつうなんか「天才少年正太郎クンの謎を解く」だとか「両親との再会」だとか「鉄人が失われる」とか何らかの終わりらしい終わり方があってもよさそうなのにw何もなく唐突と言うのが横山流なのでしょうか。

というか11年経っても大人たちも老けもせず正太郎クンは絶対に大人になっててよさそうなのに少年のままなのですからこの鉄人ワールドは永遠にそのまま、ということなのでしょう。

鉄人28号は今でも夜の街でガオーしてるのです。

 

私は手塚治虫マンガが好きで色々読んできたのですが何故か『鉄腕アトム』だけは強烈な拒否反応が出て今でも読めていません。

横山光輝鉄人28号』の方を先に読んでしまいました。確かにこちらの方には拒否感は出ませんでした。

鉄腕アトム』『鉄人28号』そして『宇宙戦艦ヤマト』などには太平洋戦争の禍々しい怨念が詰まっているような気がします。

その中でも横山光輝氏はいくらかさばけていたのかもしれません。怨念がそんな容易いものではないでしょうが。

 

ということで長い間気になっていたけど読めないできた『鉄人28号』無事に読了しました。他の著作と比べたら早歩きしてしまいましたがまた読むことはできますしね。

可愛い正太郎クンの魅力は納得を持てました。

 

まだまだ横山マンガの道は続きます。

さあ次は何を読みましょうか。