
これが表紙全体だったのか。
ネタバレしますのでご注意を。

「ダイモス」だって?とちょっと驚いてしまった。
横山作品に1973年『ダイモス』があるからだけどそもそも「ダイモス」って火星の衛星フォボスダイモスなんだから慌てる必要はない。
横山作品は「マーズ」といい実際にある星々からイメージを作っているのだろう。そういうところも実直な感じがする。
地球に帰ってきたロケットの着陸に感動していた一色は「疫病神ジャック」と呼ばれている男と出会う。
彼と一緒にロケットに乗ると必ず事故が起きるのだが帰ってくるのは決まって彼だけだという風評があるという。
さて一色の訓練が始まる。
宇宙飛行士の訓練といえば名作映画『ライトスタッフ』がある。私はもうこの映画が大好きで何度も観たのだけど機会があればつい観てしまう。どこをとっても良い映画だけど訓練シーンがまたすばらしい。
『ライトスタッフ』自体は1983年製作だけど題材の「マーキュリー計画」は1958年から63年でありその様子が描かれる。
無論本作『宇宙船レッドシャーク』もその影響を受けてないわけがない。
つまり映画『ライトスタッフ』より18年も早い『ライトスタッフ』を横山氏は描いているというのは言い過ぎだろうか。少なくとも私は同じ精神を感じてしまった。
横山かぶれが酷すぎる。
同期生が不合格となり一色に別れを告げる。その際に一緒にロケット着陸を観た時使った双眼鏡をプレゼントされる。物語は簡潔なのにこういうエピソードを入れてくるから印象的になる。
一色は同期生が最後に躓いた「カンオケ」と呼ばれる過酷なテストに合格した。

こういうのがかっこいいんだよ。
テストに合格した一色はジャック・ローレイの助手となって共に宇宙船に乗り込むことになる。ふたりはいったん宇宙ステーションへ向かう。

うひゃあ、わくわくするね。
ステーションで他のスタッフと合流しレッドシャーク号は土星の衛星タイタンへと向かう。そこに宇宙空軍基地を作るための調査なのだ。
ところでタイタンといえばまたもややはり萩尾望都の『X+Y』を思い出してしまう。
本作とは違い宇宙旅行が当たり前になっている時代の設定だ。つまり『ウは宇宙船のウ』の後が『宇宙船レッドシャーク』でありその後に『X+Y』の世界へとなっていく。萩尾望都氏はSF作品において横山光輝氏の影響を感じるけど他に少年の描き方に踏襲を感じる。
特にバビル2世のクールというより冷酷にまで感じる正義感は14歳前後の少年の特性として萩尾氏の少年の描き方になっていると思う。
例をあげれば『ポーの一族』のエドガーもだけど『バルバラ異界』のキリヤにはバビル2世の血が濃く受け継がれているように思える。
大人を拒む少年の純粋さがバビル2世となりキリヤとなっている。その時期の冷たい美しさなのであり大人になれば柔らかく変化していき少年の冷たい美は失われる。横山氏の描く少年は自然にその美しさが備わっているために読者の心を引き付けてしまう。萩尾氏の場合はそれを自覚して生み出しているのだと感じる。
と、話がそれてしまった。
本作の一色は冷たくはないがまっすぐ前を向き突き進むタイプでやはり魅力的だ。だけど優柔不断さが求められる現在のキャラとしては実直すぎるだろう。
さてレッドシャーク号は遭遇した流星群を避け目的のタイタンへと到着する。ところがここで今まで強気だった一色が発病し倒れてしまう。

こういうシーンを描くから騒がれるんだよ。
そして一色はジャック大尉のやさしさに打たれてしまう。
一色を休ませて他のメンバーはタイタンに降り立ちキャンプ地に適した場所を探し設営する。こうした過程を細かく描いていくのが横山マンガの楽しさだなあ。
出来上がった住居に入った時の心地良さが伝わるようだ。

すばらしい光景。
レッドシャーク号に一色を残し他メンバーは設営したキャンプで一夜を過ごすことになる。
ところがここでおそろしい伝染病が発生してしまうのだ。
最初に発病した岩田博士は苦しみ死んでしまった。
原因究明をする隊員たちは捜査中に沼地に落ちた岩田博士の宇宙服に付着した泥に得体のしれない菌が見つける。
ここでジャック大尉は「実は流星群を回避したためにレッドシャーク号の燃料が残り少なくなってしまった」ことを話す。
他メンバーは「みんな死んでしまうとはかぎらない」と言い返すがジャックは「死ななくてもここにいる者は地球に帰るわけにはいかん」と断言する。
「この恐ろしい病原菌を地球に持ち帰るわけにはいかん。我々は後から来る者のためにできる限りの調査をしていくべきだ」
連絡を受けた一色は皆を残して帰ることはできないと苦しむがジャック大尉の叱責を受けて自分の使命を理解した。
今度は自分が疫病神と呼ばれる覚悟をして一色は地球へと戻る。
少年マンガには様々な敵が現れるが怪獣でも宇宙人というのでもなく病原菌によって殺害されてしまう。
これを読んだ当時の子どもたちはどう思ったんだろう。本物だと感じたのではないのだろうか。

次は「ガニメデの巻」始まる。
お楽しみに。