
第2巻いきます。
ネタバレします。
vol.12 名残りの春
金太は入学式を迎える。
祖父は娘にその姿を見せたかったと惜しむ。
黒マント=柳川大雲は祖父に金太の絵描きの才能を告げる。
「彼は絵描きの顔です。悲しみがあの子に筆を持たせます。悲しみがあの子に色を塗らせます」
小学校では「民主主義教育」が始まっていた。
生徒よりも教師の方が戸惑っている。
金太は銀子と机を並べた。
あの石松とも同組だった。
先生は「諸君とオレとが初めて会った日だ。親睦をかねて裏山へヨモギを摘みに行こう」と誘う。
先生はそのヨモギを餅にしてくれるらしい。
金太はそれを黒マント柳川先生にあげようと思ったが祖父は彼がすでに帰ったよ、と告げる。
金太はまだ間に合う、と駅へ走った。
が、すでに汽車は出た後だった。
金太がますます可愛くなっていく気がする。
自分自身を描いているのに上村氏の思い出はほんとうに美しいんだろう。
vol.13 女の肌
金太は熱にうなされていた。
東京の空襲で母に抱かれて逃げたのだが母は空爆で死んでしまったのだ。
金太は母が恋しかった。
しかしその顔さえあまり覚えてはいないのだ。
利根川の支流には釣り場があり子供たちは釣りをして遊んだ。
金太もまたそのひとりだった。
が、釣りの途中で川に落ち込みその近所の女性が差し出した手につかまり命拾いした。
女は金太を家に連れ帰り服を乾かし甘酒を飲ませてくれた。
「坊や、いくつ?」
「7才です」
「かわいい」と女は金太を抱きしめる。
これが母の匂いというものだろうか、金太はその胸に顔をうずめた。
「ケッ!そんなにガキが欲しいかよ」
襖の向こうにいた男は女の夫だった。
男は戦争で片足を失っていた。
かつては東京の新聞社で働いていたらしい。
(うーん、本当に才能あるなら記事を書くのはできるんじゃ、というのはないのかね)
妻の実家で酒を飲み暮らす毎日らしい。
女は男の分まで野良仕事をしていた。
金太はその女性に母親を重ねた。
だが釣り帰りのバスの中で上級生が野良に出た女を見て「あの女は蛇女だ。身体中にウロコがあるんだ」と言い出す。
金太はカッとなって上級生に殴りかかったがかなうわけがなかった。
祖父は金太の話を聞いて礼状と娘の遺品である着物を金太に持たせた。
金太は早く会いたくて走っていく。
だがそこで見たのはあの片足の夫から縛られ打たれ辱めを受けている女性の姿だった。
しかも夫はその女が求めているのだ、と笑いながら話すのだ。
金太は荷物を持ったまま帰った。
ぼくのお母さんはこの世にたったひとりしかいなかった。
また熱がぶり返してきたようだ。
戦争の悲惨さと少年の慕情。
vol.14 DDT
相撲の軍配で言い争いになり教室の廊下に立たされる金太・銀子・石松の三人。
下校時間になってもお許しがでないまま放置された。
他の生徒は帰っていく。
この時期、小学校は教室・机が足りずに二部制をとっていて金太たち低学年の授業が終わる昼過ぎに高学年が登校してくるのである。
(知らなんだ。それこそ関東だからなのか)
廊下に立たされている金太たちは高学年にいじめられぼこぼこにされてしまう。
金太たちはやむなく職員室へ行って先生に「帰っていいですか」と聞こうとするが中では「県からの図書の通達があいまいで焼くべきだったのか、かくすべきだったのか」でもめにもめていた。
とても中に入れず元の廊下に戻り再び高学年に殴られその教師からは「もう帰りなさい」と言われる。
やっと帰ろうとした三人は用務員さんに呼び止められDDTをかけられて頭は真っ白になった。
「二、三日頭を洗ってはいけないよ」
(知らなかった。たいへんだ)
三人で帰る途中石松がつぶやく。
「やっぱり俺の足、土俵を割ってたのかもしれねえな」
なかよしこよし
みんないいこ
vol.15 多数決
この頃、成年者への米の配給は1日お茶碗1杯。闇ルートを通すか、買いだしに行かなければ生きてはいけなかった。
金太たちの住む千葉の町には買い出しの人の群れが訪れていた。
若い夫婦は夫が米を赤ちゃんのようにおんぶして妻はおなかを膨らませて運んだ。
金太と銀子はマーケットに行って食べ物を見た。
「買い食いしてはいけない、って先生が言っていたじゃないか」という金太に「見つからなければ平気よ」という銀子。
とある大学教授が売っていたまんじゅうは「まずい」というので誰も買わない。
金太はあえてそのまんじゅうをふたつ買い銀子と食べた。
誰にも見つからないように。
翌日のホームルーム。
「石松くんが犬に石をぶつけていたのは悪いことだと思います」という発言があり「石松君が悪いと思う人」には多数の手があがり、「石松君が正しいと思う人」には誰も手があがらない。
多数決の時代になったのだ。
ところがここで金太が昨日マーケットで買い食いしていたという発言がされ「金太が悪い人」に大勢の手があがり、「いいと思う人」は銀子だけが手を挙げた。
銀子は「金太がまんじゅうを買ったのはあたしが言い出したことで、しかも人前で「まずい」といわれたおじさんを助けるために買ったのです」と言い訳した。
先生は「「結局は買い食いしたんだな」とぴしゃり。
銀子は「でもそれを悪いことだとは思いません」と即答。
が先生は「多数決で決められたことに従わねば民主的ではないんだァ」と切れる。
「本日のホームルームは終了」と宣言する先生に銀子は「あたしが男か女かの決をとってください」と言い出す。
「あたしが男だと思う人は手を挙げてください」
だれも手をあげない。
「女だと思う人は?」
全員が手をあげる。
「残念でしたァ」と銀子が見せたものはオチンチンだった。
金太と銀子が帰る途中昨日の大学教授と出会う。
教授は「キミたちのおかげで張り切れたよ」とお礼にまんじゅうをくれた。
夕陽の中で食べたまんじゅうは妙に酸っぱい味だった。
vol.16 問題児
金太・銀子がいる一年三組の教師は教室にこのふたりだけがいるのを見て驚く。
他の生徒は外に居り「あんなオトコ・オンナと一緒に勉強するのはイヤなのだ」と言い張った。
教師は「銀子の育った環境とその先天性欲情度の原点を把握せねばならんのだ」と怒号した。
だが「で、どうすんの?」という問いに「席順を改める。銀子を男として他の女とならべなければいかん」と答える。
だが女子たちは「あんな気味の悪い男と並ぶのはイヤ」と皆否定するのだった。
銀子の伯父大平福太郎も呼び出され事の鎮火を望まれるも銀子はひらりと身をかわして逃げる。
放課後、金太は石松に呼び出され「女の格好をした銀子とおめえは助平なことをしていたんだべ」と追及される。
(どういう発想なんだ)(そういうものなのか???)
カッとなった金太と石松は取っ組み合いになり石松が取り出したナイフで金太の手の甲が切られて出血する。
石松は逃げ出した。
金太は教師から手当てを受けしぼられる。
帰宅すると祖父が倒れたのだと近所のおばさんたちが騒いでいた。
倒れたのは風邪から来た熱のせいだが肺炎にならないよう気を付けなければならないと医師は言う。
「ペニシリンが手に入ればいいのだが田舎医者には回ってこない」という。
夕食の支度をしながら金太は泣いた。
「お祖父ちゃん、死なないでくれよォ」
そこに頭に布を被った銀子がやってくる。
頭を虎狩りにされてしまったのだ。
「ひでぇことするなァ」金太はつぶやく。
金太はやさしいな。
この時代、というか昭和後期でも「オトコオンナ」と言って気味悪がる風潮はあったように思う。
今は今でいろいろな問題はあるがここまで酷い対応をされることはなくなった、のではないかと願う。
しかし今更だけど上村一夫氏の絵が凄まじく上手い。
さらに子どもたちの描き方がかわいい。
見ていると多くの漫画家たちが影響を受けているのがわかる。