ガエル記

散策

映画

『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ その2

あまりにおもしろくてずっと解析していくこともないと思うのですが、一番感動したのは息子君が(貧乏のほうでも金持ちのほうでも)父親を凄く慕っていて尊敬しているということですね。 しかしその尊敬と愛情は父親が息子君を大事にして愛しているからこそな…

『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ

噂にたがわずとんでもない面白さでした。堪能しました。 ネタバレしますのでご注意を。 観終わったばかりで何も整理できてはいませんがとにかく面白かったです。 人情もの的な映画なのかと思っていたらむしろ昔懐かしいコンゲームを思わせる流れになっていて…

『影裏』大友啓史 その3

映画化を聞いてこの画像を見た時は期待しました。 以下ネタバレしますのでご注意を。 なんといってもこの映画作品を良しとできないのはそれ自体が同性愛を表面的にしか描いていないからです。 先日も書いたように大友監督は原作にはないセリフ「ものごとの表…

『影裏』大友啓史 その2

北の大地と書いて岩手県ということでいいのだろうか? 原作は沼田真佑氏によって書かれた素晴らしい小説ですが、映画は大友啓史監督によってその価値は非常に歪められてしまいました。 以下ネタバレしますのでご注意を。 松田龍平、綾野剛そして父親役に國村…

『影裏』大友啓史 その1

原作小説の感想を書いた時「この映画に期待している」と本気で思っていたのに映画公開にも(どうせ行けないが)DVD化にもまったく気付かず偶然見つけた時はすでに旧作品になっていました。 ネタバレしますのでご注意を。 芥川賞受賞という華々しいデビュ…

『秋瑾 -競雄女侠-』ハーマン・ヤウ

アマゾンプライムで鑑賞したのですがなぜかこの映画を検索しても情報が出てきませんね。 日本でも学んだという秋瑾という名の実在の女傑の物語ですが私はこの映画で初めて知りました。 数少ない情報を読んでもやはりあまり有名ではないようですがこれは観て…

『春の雪』行定勲

日本製の「恋愛映画」を観ると(恋愛映画と称されているものを観ることが少ないのではありますが)いつもそこに恋愛がないように思えるのはどうしてなのでしょうか。いまだによくわからないのです。 その中でも本作『春の雪』にはまったく恋愛など存在してい…

『危険なメソッド』デヴィッド・クローネンバーグ

なぜかこの作品のポスターに関しては海外のものより日本のほうがよかったのです。 さっと言葉にしてしまえないほど興味深い映画でした。 まず感じたのは異常者として登場しているザビーナは現在の人間の目からはむしろまともに見えるのではないでしょうか。 …

『フォードvsフェラーリ』ジェームズ・マンゴールド

wowowにて鑑賞。 良い映画だと聞いていましたが本当に良い映画でした。文句なし。古臭い時代のノスタルジーが好きであるならば。 ネタバレしますのでご注意を。 昨日書いた『ファーストマン』と違い伝統的なアメリカの男たちの物語。スピードと記録に挑戦し…

『ファーストマン』ディミアン・チャゼル

この映画の記事はもう書いたんだろうか。覚えていないのですがもう一度観るのは辛いので再度書くこともないと思っていました。 先日「父と娘の物語」に良いものはあるだろうかと考えていてまず思いついたのがこの映画でもう一度観なおしたくなったのでした。…

『ミス・メドウズ』カレン・リー・ホプキンス

とても面白い映画でした。 ところがレビューを見てみるとかなり低評価でしかも呆れ果てたという感じが多くてちょっと驚きました。 ネタバレになります。ご注意を。 実にアメリカ的な女性のアメリカ的な物語、と私は思いました。 自分の個性を隠すことなく正…

『ねじの回転』ティム・ファイウェル

ヘンリー・ジェイムズ原作小説はいかにも私が好きそうなカテゴリなのにもかかわらずなぜかこれまで縁が無くて読まないままできました。 今回BBC製作の本作を観て今更ながら「これは!」とはまり込んでいますw とりあえず小説を読まねばと思いamazonを除くと…

『戦ふ兵隊』亀井文夫

Fighting Soldiers(1939) 一月万冊、安冨教授から『戦ふ兵隊』の映画を教えていただきました。 昭和14年製作。日中戦争のなか戦意高揚のためのドキュメンタリーとして作られました。しかしその内容が戦争で家を焼かれ立ち尽くす中国人や日本兵士の悲惨な…

『カリスマ』黒沢清

はまりました。 難解で一つ一つの場面に何らかの意味があるとかどうでもいいと思うほどにおもしろかったです。 なんですか、この奇妙な感じ。 登場人物は非常にごくあたりまえの日本人 としか見えませんがあたりまえであればあるほど奇妙で不気味でおかしい…

『私はあなたの二グロではない』ラウル・ペック

(I Am Not Your Negro)は、ジェイムズ・ボールドウィンの未完成原稿『Remember This House』を基にしたラウル・ペック監督による2016年のドキュメンタリー映画である。サミュエル・L・ジャクソンがナレーションを務めるこの映画は、ボールドウィンによる公…

『リチャード・ジュエル』クリント・イーストウッド その2

とはいえリチャードが痛々しいのは「さえない男」だからではなくて「立派なアメリカ市民の鑑」だからなんですよね。 彼はいわゆる保守の人ですね。アメリカ魂を持った男性なわけです。 正義を愛し、銃を信じ、アメリカ政府を尊敬している人物です。お母さん…

『リチャード・ジュエル』クリント・イーストウッド

クリント・イーストウッド映画の見本のように面白く楽しめる一作でした。 正義とは何かを見つめ人生の価値を考えさせられるのがイーストウッド映画だと思います。その表現は芸術とかマニアックなものではなくて誰が見てもとてもわかりやすく退屈せずに楽しめ…

『エヴァ』ブノワ・ジャコー

最近の日本の観客は簡単に答えが見つからない作品を酷く嫌う。以前はまだ難解な映画を有難がる一派もいたのですが1990年頃を境に答えがすぐに見える作品でないと罵声を浴びせるようになってしまいました。 この映画作品などはその最たるものかもしれませ…

『マイケル・ジャクソンの思想』安冨歩 その2「ウィズ」

ダイアナ・ロスがドロシーを演じる黒人版『オズの魔法使い』である『ウィズ』でマイケル・ジャクソンはかかしを演じています。 安冨歩著『マイケル・ジャクソンの思想』は昨日書いたように主に『ライブ・イン・ブカレスト』に基づいて分析されているために『…

『アヴリルと奇妙な世界』 クリスチャン・デスマール、フランク・エキンジ

スチームパンクSFを思い切り描きたいがために世界の歴史を変えてみました。 スチパン(って言ったりするだろうか)描写はとても好きですしなにより猫のダーウィンがあまりにも魅力的な作品でした。 ヒロイン・アヴリルをはじめとするキャラクター造形は特に…

『レッドタートル ある島の物語』マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット

昨日一度書いてあげていたのですが、考えが変化して書き直します。 もともとの文章はこの作品の技術の高さを褒めていたのですが、作品を好きになるかどうかはそこではない、と思い直しました。 先日観た台湾アニメ作品『幸福路のチー』とは比較にならないほ…

『幸福路のチー』宋欣穎

実をいうと本作中身を見るまでは期待していませんでした。日本やアメリカ・フランスのアニメを見なれてしまった目には本作のポスターとなるイラストがあまりに稚拙に映ったのです。 同じように感じた方はその偏見を捨てて内容を観てください。きっと目にはま…

『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』レミ・シャイエ

ロシアの物語ですがフランス語で作られたフランスのアニメ映画でした。日本でも外国を舞台にしたアニメは多いですが、外の国から見るからこそよりファンタジックになる要素はあるのかもしれません。 ネタバレしますのでご注意を。 氷の世界を進みゆく少女、…

『虐待の証明/ミス・ペク』イ・ジウォン

子供を酷い目にあわせる映画はどんなホラーよりも怖ろしくて観るのが耐えがたい。この映画も何度も観るのを止めようとしたのですが「自分は観ているだけなのに逃げちゃいけない」と言い聞かせてどうにか見通しました。 韓国映画は久しぶり(と言うほどでもな…

『約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語』ニキ・カーロ

上の映像を撮りたいために作ったのではないかと思えます。 とても奇妙で不思議なテイスト(ワイン映画だけに)の作品でした。 ネタバレしますのでご注意を。 この不思議感は女性監督だからでしょうか。監督がニュージーランド人、俳優はフランス人ベルギー人…

『グッバイ、サマー』ミシェル・ゴンドリー

好きです。 こんな感じの少年時代のひと時を取り出して描いた映画というのは監督自身を描いた、というノスタルジックな作品としてひとつのカテゴリーを作っていると思いますが単純に好き嫌い、という感覚が引き寄せられるのではないでしょうか。 というわけ…

『DISTANCE』是枝裕和

カルト集団が起こした大量殺人事件において加害者遺族たちが慰霊の旅を通じて自分たちを見つめなおす物語です。 もちろん思い起きるのはオウム真理教の一連の事件です。 その時代に生きていた記憶できる年齢層はそれらを忘れてしまうのは難しいでしょう。 私…

『ゼイリブ』ジョン・カーペンター【安倍政権の終息の今日】

デイブ・フロムさんがこの映画を話題にしていたのを聞いて観てみました。 以下ネタバレです。 デイブさんからほとんど話は聞いていたのですが、そのとおりコテコテのディストピアものであります。 この映画は1988年製作で当時のレーガン政権を皮肉るものであ…

『CURE』黒沢清

何度か観ていますが何度観ても怖い映画です。 観ているうちに自分自身が取り込まれてしまいそうに思える映画、というのはそうそうないものですが、まさしくこの映画はそれだと言えます。 以下ネタバレです。ご注意を。 おまけに今回は先日観た原田真人『日本…

『湾生回家』黄銘正(ホァン・ミンチェン)

戦前の台湾で生まれ育った日本人たちのことを湾生(ワンセイ)と呼ぶのだそうです。 1895年から1945年までの50年間、台湾は日本の統治下にありました。そこで生まれた日本人の子供たちにとっての故郷は台湾なのでした。 日本の敗戦によって日本人たちは台湾…