ガエル記

散策

『王の運命-歴史を変えた八日間-』イ・ジュニク

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安富歩教授に感想を聞きたい映画でした。親が子与える歪んだ教育と愛情は残酷な状況を生み出してしまうのです。

 

そしていつもながら邦題『王の運命』は間違っているわけです。これは王だけではなくすべての親子の物語であると思います。

原題は『사도思悼)』なので監督ご自身は『王の運命』と考えてはいませんでしたね。原題の『思い悼む』はまったく正確なタイトルです。

 

以下ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

本作はとても優れた素晴らしい映画なのですが、では登場人物に共感できるかと言われればまったく同意できません。上のポスターに書かれている「わしが王でなくお前が王の息子でなければ」という言葉も言い訳にしか過ぎないのです。

この物語は王族だから、ではなくどのような親子の間でも様々に条件を変えながら同じ様に考え行っていることなのではないでしょうか。だからこそ多くの人の感動を得られたのです。

 

それにしてもなんという意地の張り合いなのでしょうか。

この映画を観ていると人間にとって最も大切なことは何かを考えてしまいます。

王族であろうとなかろうと蔑みや偏見を持たず嫉妬や卑下をせず心を頑なにせず意地を張り通さないことが幸せなことではないかと思われます。

いや王族は民と違うというのなら、そういった考えをもっているからこそすでに地球上には王族は少なくなってしまったという証明がされているわけですね。

悲しいかなここ日本では王族とも称されぬ特別な存在の一族がいまもなお存在し続けるることを課されています。その方々の本心はどうであるのか。いろいろな報道を聞くたびにこんな非人道はもう廃止したほうがいいのではないかと思うのですが。

 

話がそれてしまいました。

 

 

本作はとても嫌な物語なのですが、同時に見入ってしまう映画でもあります。

『パラサイト』で愛情深い父親を演じたソン・ガンホがここでは愛情のない男を演じています。

愛情のある人間に育つには愛情が必要なのですね。

 

イ・ジュニク監督は『王の男』『空と風と星の詩人 尹東柱の生涯』も大好きな作品でした。今猛烈にもっと観なければ、と焦って悔しんでいます。

日本語版になっていない作品も多いではないですか。早く日本語版化してくれー。