ガエル記

散策

『陰陽師』岡野玲子 その2

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さて続きます。

 

岡野玲子著『陰陽師』ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

上の画像が岡野著オリジナルキャラクター「真葛」です。

私は原作未読なので夢枕獏氏がそのあたりどう書かれているかは知らないのですが岡野『陰陽師』の紹介でそう書かれており、晴明・博雅のそばに女性は置かれていないという情報から話を進めていきます。

 

オリジナルキャラクター「真葛」の名前はどこから来たのでしょうか。

安倍晴明の母親は「葛の葉」という不思議な能力を持つ狐だという言い伝えがあります。作品の中でも三巻でその言及がありますがそれ以降それについて触れることはないまま終盤において晴明が「母上」と呼んで助けを乞う場面が何度か出てきます。

この時にその代わりとなるかのように彼に寄り添うのが真葛です。

 

もちろん現実に安倍晴明には妻となった女性がいるわけですが彼女に関する記述は残っていないため岡野玲子氏はその物語を自由に創作できることになります。

岡野『陰陽師』はこのように原作からは離れていったのでしょうけど歴史の記録に基づいて物語られていると思います。

晴明の師匠でありライバルともなる賀茂忠行保憲父子との関係性はとても興味深いものです。

また晴明のライバルだったと伝えられる道満を女性として描くのも面白い試みです。

 

しかしやはり岡野玲子陰陽師』の意義は男性の世界に女性という性の必要の問いかけです。

晴明という名前は生命にも通じるように思えます。

清明が真葛との間に子を成しそれを愛しむさまが描かれます。

この当たり前でありながらとても大切な物語は今まであまり描写されてこなかったようにも思えるのです。

 

男性性と女性性との結びつきによって生まれる「子」という存在、そしてその「子」を愛し愛しむこと。

その大切さはあまりにも物語られていないのではないでしょうか。