ガエル記

散策

家族

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ロバート・ゼメキス

先日TV放送もされて再び人気を博している本作です。レビューを観ても大絶賛で「この映画を嫌いな人に会ったことがない」という文章を何度も見ました。加えてあの岡田斗司夫さんも本作の特集を配信されていて私も見たのですが「完璧な脚本によるめちゃくちゃ…

『僕はイエス様が嫌い』奥山大史

冒頭観てもうすっかり惹きこまれて観てしまったのですが、なんかもう茫然としています。 特に最近、日本の映画を観るたび失望して「日本映画にはもう未来なんかないんじゃないか」とまで思っていたのでやっと小さな灯りが見えたような気がしました。 本作監…

『アガサ・クリスティー ねじれた家』 ジル・パケ=ブランネール

グレン・クローズとテレンス・スタンプが出ているのなら観ずにはおけないではありませんか。 アガサ・クリスティ原作ということだけでも観ないわけにはいかないのですが。 大富豪の大きな屋敷。そこの住む人々は皆「変わっている」 昔に戻ったかのような演出…

『アリスのままで』リチャード・グラツァー/ワッシュ・ウェストモアランド

記憶が無くなる、知性が無くなる、という話は西洋のものでとても多いように思えます。ただ過去に起きた記憶が無くなる、だけならまだいいのですが知性が衰えていくのは堪らない恐怖だからでしょう。 そうしたカテゴリの最も印象的な作品に『アルジャーノンに…

『炎上』市川崑

三島由紀夫『金閣寺』を原作として美剣士で名を馳せていた市川雷蔵がそれまでのイメージを覆す主役を演じました。 再鑑賞です。 ネタバレしますのでご注意を。 1958年製作映画ですが今観ても遜色ない表現で違和感を覚えません。 一種の障害を苦痛として暗闇…

『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』原恵一

『クレしん』でも絶賛されているこちらですが、まったく観ていなかったのでした。 令和の今となっては懐かしむといえば平成になるかもしれませんが、それでもまだまだ昭和の残り香が揺蕩っているのは感じます。少し前、つまり平成時代にはやたらと「昭和を懐…

『一命』三池崇史

先日観た『切腹』のリメイクがあると知らずにいて偶然見つけ、観てしまいました。 しかも観始めてからも監督が三池崇史だと気づきませんでした。三池監督作品は(多作の方なので全部ではありませんが)かなり観ていたのですがあまりにも精緻で気品ある趣だっ…

『八月の狂詩曲(ラプソディ―)』黒澤明

こんなに良い映画だったんだなあ、としみじみと感じました。 黒澤監督後期の作品で時代劇でもアクションものでもないようなのでなんとなしに見送ってしまっていましたが、とんでもなく素晴らしい映画でした。 やはり黒澤映画らしいがっしりとした骨太な感覚…

『炎と女』吉田喜重

アマゾンプライム+松竹にて鑑賞。初めて吉田喜重監督を知って今ちょっと興奮しています。 アマプラで+松竹無料期間がなければ観てもいなかったでしょう。それも木下惠介を観ようとして、だったのですが他にも何かないかと探して出会いました。 監督名も知…

『お嬢さん乾杯』木下惠介

不覚にも泣いてしまいました。 この映画で泣く人はいるんだろうか、と思いながら。いや結構みんな泣いてしまうんじゃないか、とも思うのですが。 昨日観た『青春残酷物語』とは打って変わって物凄く真面目この上ない男女の恋愛ですが、それはそれで互いに傷…

『はじまりのみち』原恵一

とても良い映画でした。映画監督・木下惠介が戦時中に病の母親を疎開させるというエピソードを中心にして当時の日本の状況と家族の情愛を細やかに描いた作品でした。 木下惠介監督製作の『陸軍』はラストが「女々しくて戦意を失わせる」とされ次回作を見送る…

『鬼龍院花子の生涯』五社英雄 その2

続けます。 先にお断りをしますが、前回松恵が「孤児院からもらわれて」というのは間違いでした。子だくさんの家から弟と一緒に選ばれたのでした。あんまりいっぱいいたので早合点しましたwまさかあんな大人数が兄弟だったとは。「貧乏人の子沢山」で困って…

『鬼龍院花子の生涯』五社英雄 その1

『鬼龍院花子の生涯』作者は宮尾登美子。1980年発行。 映画は1982年公開。ですが、当時は観ていませんし観たいとも思いませんでした。宣伝が 時期は忘れましたが相当後に、というより数年前に初鑑賞して感激しました。なので今回は再鑑賞となります。 公開時…

『ブロー・ザ・マン・ダウン~女たちの協定~』ダニエル・クルーディ、ブリジット・サヴェージ・コール

Amazonオリジナル映画です。もちろんアマプラで鑑賞。 いまだに時折「映画はもう作られすぎていて新しい物語を作ることができない」という人(ほとんど男性)がいますが、そのほとんどは男性主人公、もしくは男性目線での女性主人公(つまり女性の視点ではな…

『Second Best 』クリス・メンゲス

なんとも不思議な味わいの映画でした。 うだつの上がらない40代の独身男性が養護施設にいる10歳の男の子を養子にしようと試みる物語です。 昔の話ならいざ知らず現在そういう設定にするのなら必ず中年男が児童性愛者ではないかと思われてしまうでしょうし実…

『ある少年の告白』ジョエル・エドガートン

映画には大まかにふたつの種類があってひとつは個々人の精神を表現するもの、もうひとつは実際存在する事象を良きにつけ悪しきにつけ報道する形のもの、と言えるのではないでしょうか。 例えば先日観た『魂のゆくえ』は社会を描きながらも本質は個人の精神の…

『A.I.』スティーブン・スピルバーグ

非常に変わった映画作品です。 いったいこの映画はなんなのでしょうか。 スタンリー・キューブリックのアイディアをスピルバーグが引き継いで作り上げた、という過程そのものが作品内容を分裂させてしまっっているのかもしれません。キューブリックの暗闇と…

『マルサの女』伊丹十三

物凄い名作という評価であり私自身初鑑賞で面白いと思っていたのにDVD購入をしていなかったのですが改めて観てみてどうしてかが判りました。 以下ほとんど映画のあらすじではなく性的描写についての文章です。映画自体は面白いです。ネタバレというほどのな…

『最後の誘惑』マーティン・スコセッシ

こんな面白い映画だったのか!と唖然として観ました。 何度も観なおしてみたいと思います。 ネタバレですのでご注意を。 裏切り者とされるユダが実はイエスの最も忠実で深い関係にある弟子であり友人であるという解釈は素晴らしいと思えます。 クリスチャン…

『ベイビーブラザー』マーク・ミュンデン

これは思いもよらぬ拾い物でした。もうすぐ期限が切れてしまうアマプラですが、最後に物凄い発見。観た後すぐ、久しぶりにDVD購買しました。同監督の別作品まで。こういう映画の感じが大好きなのです。 本当に噂にも聞いてなかったし、このタイトルとジャケ…

『アンダン ~時を超える者~ 』

www.amazon.co.jp アマゾンプライムにて鑑賞。吹替で観ましたが字幕もあります。 とんでもないことが起きた時に時間をさかのぼって出来事を変えてしまう、という話は数えきれないほどあるけどその発想自体は好きではないです。 しかしそれでも作品が作られて…

『17歳の肖像』ロネ・シェルフィグ

「これは絶対観て欲しい映画」というお勧め文を見たのでまったく知らなかったのですがレンタルしてみました。 2009年のイギリス映画でかなりの受賞やノミネートをされた作品でもありました。始まってしばらくあまりにも普通の女学生物語だったのでいささか驚…

『美しい絵の崩壊』アンヌ・フォンティーヌ

アマゾンプライムにて鑑賞。原題は『Two Mothers』レズビアンなのでは?と言われてしまうほど仲が良く、少女時代からの友情を互いが結婚しそれぞれの息子が成長してからもなお離れることのない二人の女性の物語です。 ネタバレです。 美しい海辺での夢のよう…

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』 スティーヴン・スピルバーグ

報道は政府のためにではなく国民の知るためにある。 そして裁判は報道の自由の勝利を明快に下す。 地方紙ながら記事の高い水準を自負するワシントンポスト。夫の自殺によって発行人の席に座ることとなった妻のキャサリン。当時、女性がそうした地位に就くこ…

『彼らの犯罪』ー「親が・殺す」樹村みのり

非常に読み応えのある短編集でした。 第一話・表題作でもある「彼らの犯罪」は同時期を生きていたものならほとんど聞いたことはあるだろういわゆる「女子高生コンクリート殺人事件」についてのマンガ作品です。心底ぞっとする怖ろしい事件ですが今回は第二話…

『サーミの血』アマンダ・シェーネル

とんでもなく心に食い込んでくる映画でした。あっという間に観終えてしまった気がします。 女性主人公クリスティーナという名前は偽物で本当の名前はエレ・マリャである彼女はスウェーデン人として生活をしてきたのですが本当は「サーミ人」でした。 かつて…

『万引き家族』是枝裕和

ずっと観ようとは思ってはいたものの踏み切れないでいたディスクをやっと挿入しました。 ディストピアものが好きなくせに現実を観るのは怖い私です。 しかし観てやはりよかったと思いました。 「万引き家族」は「良い家族」ではなかったのですね。「疑似家族…

『歪んだ波紋』少子化になっても仕方ないなこれじゃ

少子化とは関係ない写真 NHKプレミアムドラマという物凄い肩書がついた『歪んだ波紋』について今朝がた「気持ち悪い」を連発しましたが、それだけじゃなくこのドラマを観ていると現在日本が少子化してしまう理由が如実に伝わってきます。 報道を題材にしたこ…

『かぞくのくに』ヤン・ヨンヒ

最近こんなに夢中になって映画を観たことがない、というほど食らいついてみてしまいました。 監督自身の体験をもとに映画化したという作品なのですが、それだけに現実をざっくりと切り取って見せられているような生々しさがあります。 それはもっとうまい方…

『わが谷は緑なりき』ジョン・フォード

宮崎駿アニメ作品『天空の城ラピュタ』を知っている人はこの映画が濃く影響していると感じるでしょう。 登場人物の善良さにも感じます。 冒頭のよくとおる呼び声がラストに関係してきます。炭鉱で働く村人が歌うことが好きで歌声が素晴らしい、ということに…