
ネタバレします。
「虚繭取り」
幼い双子姉妹と蚕の繭のお話。
愛らしい少女たちと真っ白な繭玉が天井から幾つも吊り下げられている情景が美しい。
兎澤家一族の中で”ウロさん”が見える者は山中で孤独な”ウロ守り”という仕事を継がねばならない。
素質あるものは長年出なかったが二歳となった双子姉妹はふたりともソレが見えた。
一人きりでは寂しいだろうとふたりともが山の爺様のところへ行き”ウロ守り”に必要なことを学んでいく。
木の葉につく“玉繭”は二匹の蛹が一緒に作った大きな繭でありそれを煮ながら二つの棒でからめとり二つの繭に作り直す。
薄くなった元の玉繭の中にいる”ウロさん”は混乱して出てくる、ところを捕まえて作り直した二つの繭の片方に入れて封印をする。
もうひとつの繭も封じて”壱巣””弐巣”とペアにしておく。
これで”ウロさん”はこのふたつの繭の間しか移動できなくなるのだ。
これを利用して彷徨う蟲師たちの伝達手段とするのである。
壱の繭に文を書いた紙を入れておけば蟲師が持つ弐の繭にいつか届くのだ。
が、時が経てばウロさんは虚穴を広げていく。
いずれは他の虚穴だかに貫通してしまう。
すると文がまともに届かなくなる。
繭の替え時になるのだ。
こうしてギンコも繭の変え時になり山中の綺(あや)を訪ねる。
爺様はもう亡くなっており双子の片割れの緒(いと)はある時ウロさんによって虚穴に連れていかれた、と知る。
「閉じてはならん。開けてはならん」
干した布が眠ってしまった緒の上にかかりウロさんが中にいる時に綺がその布を開けた。その瞬間、緒はどこかの虚穴に入ってしまったのだ。
それからも綺は緒をあきらめきれず探したいと願ったが、ギンコをしても緒の居場所を知り助け出すことはできなかった。
ところが数年後とある場所で老婆が繭取りをしていたその繭から十歳ばかりの幼女が飛び出してきたのだ。
虚穴では時間が止まっていたのだろうか。
後、懐の文を頼りにその幼女は故郷へ帰ったのだという。
「一夜橋」
好き合っている男女の話はなかなか結ばれにくいように思う。
だからこそ、でもある。
「春と嘯く(はるとうそぶく)」
めずらしくギンコが恋されている話、なのか。
姉と弟のふたりで暮らしている。
弟は蟲が見える体質で真冬に春を見つけて来たらしい。
ギンコがちょっと失敗してしまう話だ。
巻末に「1・2巻の時はあまりにも下手で」と書かれているが逆に言えば確かにこの頃になると話作りが格段にうまくなっている。
「籠のなか」
やはり男女の話は不幸になりやすいのか。
竹林の中から出られない男の話。
その理由は妻がいわゆる竹の精だということだ。
筍の中に赤ん坊がいる、というイメージはなかなかおもしろい。
西洋でキャベツの中に赤ん坊がいるのなら極東では筍から赤ん坊が生まれるというのでもいいかもしれない。
竹というのは竹林一帯が同じ根を持つ。
”間借り竹”という蟲はその根に寄生し家族の一員になりすます。
キスケはセツを愛して竹林から出られなくなった。
やがて子供が生まれキスケは妻子を愛したが村への未練を断つことはできなかった。
男の愛情に竹女のセツは涙を流し自分の親である白い竹を切り倒す。
男は竹林を出て村里に戻ることができたが彼の肉親は彼を拒絶した。
結局彼には竹林に戻る。
だが白い竹無しには生きられなかった妻子はやがて死ぬ。
ギンコにはどうすることもできなかった。
だが数年後、再び白い竹が生えふたりの墓に筍が出ていた。
これ・・・セツがまた生まれるのか?なかなか複雑な心境になる。
「草を踏む音」
これまでと趣の違うステージにきた感じだ。
山の持ち主の息子・沢(たく)と流れ者のこども・イサザのふれあい(決して仲良しではなくむしろとげとげしい関係性なのがおもしろい)から始まる。
山の持ち主の子供である主人公、沢(たく)は「坊ちゃん」と呼ばれる恵まれた境遇ではあるが自分の行く末は土地のことでもめて暮らすことなのだとうんざりしてもいる。
幼少期のギンコがちらりと姿を見せる。
が、沢の父親が急逝し突如山は沢の手に委ねられる。
とはいえまだ少年の沢に人々を統べる力はなく山は親類に取り上げられ滝は堰き止められ山は荒らされるだろうと知る。
イサザは仲間と一緒に山を出て行くという。
「山がおかしくなったのだ」という。
沢はイサザと一緒に行きたいと願うが翌朝イサザたちはすでに旅だちまだ残っていたギンコからイサザの言伝を聞く。
「ごめん、おまえらもここから逃げた方が良い」
半年後、山は噴火し行く当てのあるものは里を見限り出て行った。
それから十数年、少しずつ山は再生したが以前ほどの豊かさはなく生まれてくる子どもには体の弱いものが多かった。
そこに訪ねてきたのがギンコだった。
子供たちの病を治す薬の作り方を教えてくれた。
沢はギンコを覚えていてイサザのことを聞いた。
「あいつなら今も馴染みでここのこともあいつに聞いたのだ」という。
ギンコは沼にいる元ヌシに声をかけて去って行った。