ガエル記

散策

『バス停まで』萩尾望都

2018年「週刊モーニング」1月25日号

2011年の東日本大震災後、2012年『なのはな』で福島原発事故後の人々を描き、2013年『AWAY』では世界の破滅への畏怖を描き、7年経ってまた本作を描いた。

やはり萩尾望都の悲憤は福島原発にあるのだ。

 

 

ネタバレします。

 

 

男がひとり草茫々の中に建つあばら家に向かい傾いだ家の戸をこじ開ける。

頭の中では妹の声が彼を導いていく。

妹の声は男に「汚いし危ないから靴のまま入っていって」というが男は靴のままじゃ上がれないと靴にビニール袋をかぶせて入る。

家の中はすでに荒れ果て泥棒も入っていたようだという。

二階は動物が住み着いていたのか臭いのだという。

「あまり長くいちゃいけない」という。

たぶんここで今現在の私たちならば「ああ」と思うだろう。

放射能が残っているんだ」と。

 

作品の中で原発事故については簡単に記されているだけだが私たちはそれでもう十分なほど当時の動揺と恐怖を思い出す。

このマンガ作品がずっと残り遠い未来の人々が読んだ時、この作品をどう思うのだろう。

ずっと昔原子力発電所という建造物があり震災の際に事故が起こりこの物語のような悲しい話があったのだと知るのだ。

それはただの数字の記録では残せない悲しみの記録である。