
ネタバレします。
栞が突然ベビーシッターをする話。
友人のピンチヒッターで子供と遊ぶだけでいい、と言って向かった家にいた子供とは、ヨグを呼んで探していたあの不気味な女児であった。
クトルーという名前のその女児は「遊んで遊んで」と人懐こいがいうことなすこと人間離れしていてコワイのだ。
「テケリ・リ!テケリ・リ!」と叫びながらぬいぐるみを振り回す。
さらにぬいぐるみの中にまぎれていた男の人形が実はクトルーの父親で人形だと思い込んでしまった栞の驚きに満足して会社へと出かけてしまう。
お母さんは外国人らしいのだが大きくて部屋の外から顔だけが覗いている。
が、お母さんはベビーシッターの栞にケーキを出してくれたり行儀の悪いクトルーを叱ったりと良い人のようである。
しかしクトルーのヘンテコさに音を上げた栞は帰ろうとして止められやむなく今度はないはずの二階へ行って本を読むことになる。
飛び出す絵本を開いてみるとこれまた不気味な展開になる。
さらにそこからヨグが飛び出してきたのだ。
古本屋の紙魚子は「売りたい本がある」という電話を受けて訪ねてきた。
表札代わりに名刺が貼ってあり「段 一知(だん いっち)」とされていた。
奇行で有名なホラー作家の名前だという。
誰も出てこないが玄関先に本が積まれており紙魚子の父が好きそうなものばかりであった。
その片方に飛び出す絵本もあり紙魚子が開けてみると栞にそっくりな少女がトクルーやその父母がおり、そしてヨグが襲ってきた。
途端に絵本の中から本物の栞が飛び出してきた。
「紙魚子、逃げよう」
栞と紙魚子は逃げ出した。
「テケリ・リ!テケリ・リ!」クトルーは叫んだ「おねえちゃん、また来てねえ」
いや、行きたくない。
「ヨグの逆襲」1996年ネムキvol.32
栞が飼っている猫のボリスが行方不明になり紙魚子にも伝えて探していると保育園でクトルーちゃんが大騒ぎしているのを見かける。
見ないふりをしてボリスを探し続けると紙魚子が「あの段一知先生の家で見かけたという話を聞いた」と駆けてきてやむなくふたりはクトルーちゃんの家へと向かう。
そこにはクトルーちゃんをおんぶした段先生がいた。
そこへ壁に穴を開けてお母さんが顔を出した。転んだらしい。
段先生は猫探しをこころよく許してくれた。
相変わらずお母さんは大きいけど優しい。
ふたりは手分けしてボリスを探す。
紙魚子が重なっている床をめくるとまるで飛び出す絵本のように中から家具やおもちゃが出てきた。
その中に全裸の中年男が手足を縛られていて紙魚子に助けを求めてきた。
ヨグが仲間を連れてきてこんな目に会わされたという。
紙魚子はよくわからないまま中年男の戒めを解いた。
栞のほうは洗濯もの干しの中から突如現れたお母さんに驚く。
さらに次々と現れたヨグの仲間たちに怯えているとお母さんはそれらをパクパクと食べてしまった。
そこへヨグ自身が現れ栞を襲おうとしたがボリスが追ってきてヨグを抑えた。栞は叫びながら持っていた包丁でヨグの首を斬り落としてしまう。(一番怖い人)
そしてボリスを捕まえた。
クトルーちゃんが「わーい、お姉ちゃんだ」と喜んでかけてきたが栞はボリスを抱え紙魚子とともに逃げ去った。
「ゲッコウカゲムシー月光影虫ー」1995年ネムキvol.28
この一話だけ順番変えて最後に配置されたのはちょっとセンチメンタルなものだからなのだろうか。
最近近くの公園で月夜の晩に子供の幽霊が出るという噂が立つ。
誰もいないのに子供の影だけが公園のブランコやジャングルジムで遊んでいるというのである。
紙魚子は「用事がある」というので栞は早苗とマチコと三人で月夜に出かけたのだった。
果たして、本当に誰もいない公園に月光を受けた子供の影が数人遊んでいるのを見る。
マチコと早苗は逃げ出すが栞はもう少し見ていたいとひとり残って歩いていると虫取り網と籠を持った紙魚子が立っていた。
「ゲッコウカゲムシを採りにきた」という。
そしてすでに一匹捕まえ籠の中に入っているという。
目で見ても見えないが影を見るとたしかに籠の影の中に虫の影があるのだ。
逃げ出した早苗とマチコは栞が来ないので心配して戻ってきた。
「あの子、神経が太いというよりどこか一本外れているのよ」
戻ってみると栞は嬉々としてゲッコウカゲムシを見せてきた。
さらにもう一度公園で子供の幽霊を確かめようと言い出す。
紙魚子も興味を持ってついてきた。
さらに栞は紙魚子の虫取り網を借りて子供の影を捕獲してきたのである。
栞はそのまま自分の部屋に子供の影を連れ込む。
「生首と違って可愛いから飼ってみようかな。名前は影男くんにしよう」と言い出す。
(うむ、栞、ほんと怖い)
次の日、学校でマチコたちが「あの公園、昔小学校があって戦争の時、空襲で焼けて子供が大勢死んだんだって」と言い出す。
やはり子供の幽霊だったのだ。
その夜、紙魚子が栞を訪ね外へ出ると栞の影がない。
実は影男が栞の影を連れて出て行ったのではないかというのだ。
ふたりが公園に向かうと影男たち子どもの影の中に栞の影がいた。
栞は慌てて自分の影に近づくが影は逃げてしまう。
「紙魚子、捕まえて」
しかし栞の影は大勢の子供の影に紛れ込みその影たちがぐるぐるとふたりの周りをまわりだした。
追いかけても追いつかない。
「栞」
紙魚子の呼び声に振り向くと紙魚子の影が栞の影の袖を捕まえていた。
「捕まえてくれたのね」
「そうみたい」
ふたりは帰路についた。
「あたしたちって影もなかがいいのね」
「ただのデコボココンビかもよ」
(影の紙魚子が栞にほっぺをつねった)
なんというロマンチックな話なのか。
これは最後に持ってきますわ。
余韻が心地よい。
そしてちょうど終戦記念の頃に読むとまたいっそう涙ぐむ。
子供たち、遊びたかったんだねえ。