
ネタバレします。
まず「あとがき」から
ここに諸星氏の気持ちが記されている。
要約すると
「ある時期これまでの単行本の新装版や昔の作品を新しく編集しなおした短編集が矢継ぎ早に出てそこに入れる描きおろしの短編を注文された。
ある読者にとっては8ページから16ページの短編のためにその本を購入することになってしまう。
それが気の毒で描きおろしのみの短編集を作ればいいのではないか、と考えたがそううまくいかなかった。
時が経ち出版社側からの企画が立ち上がりこの本が生まれた」
ということらしい。
なんと有難いことか。
私自身は本著作品はどれも未読でありますます有難かった。
「彼方へ」
少年の幻想。
「この次は行こう」と最後に思うのは学校へではなく彼方へなのだ。
「カタツムリの話」
カタツムリが何故雌雄同体なのか、という話。
パトリシア・ハイスミスはカタツムリが大好きだったらしい。
「連鎖」
すぐ食べちゃう種族の話。
「繁殖」
すぐ食べちゃう種族、交尾する。
子供出来る。
「飢餓の予感」
メスは出産の前にたくさん食べないといけない。
ぼくは殺されそうになる。
「生存」
乾季は飢餓の季節だ。
ぼくの体にはもうひとつのぼくの頭がはえる。
そしてぼくは二つに分かれる。
殺し合って勝った方がもう一人を食べて生き残るのだ。
「加奈の失踪」
栞と紙魚子シリーズ作品だがすべてのせりふをつなげるとひとつの回文になっている、らしい。
さすがに試さなかった。
諸星氏の根気すさまじい。
これもまた回文マンガ作品。
「寝つきいいキツネ」
栞と紙魚子の回文マンガ。
「羿(げい)日輪を射る」
中国神話を基にした作品である。
嫦娥はヒキガエルになるとされているが本作では最後まで美しい不死の女神として描かれている。
「昆侖の虚(こんろんのおか)」
秦の始皇帝に「西の彼方、西王母の住む昆侖の虚に生えている不死の樹の実を手に入れて参ります」と虚偽を言った方士・盧生と侯生には強面の将軍が守護につけられた。
西王母への贈り物と旅費を手に入れたら逃げ出すはずだったふたりはやむなく旅に出る。
一行はついに昆侖の門を守る開明獣と出会う。
開明獣は将軍をはじめ供の者たちを食ってしまう。
盧生と侯生は逃げ出しその先に西王母と不死の樹を見つけた。
栄光を手に入れるか自ら神仙になるかと考えたふたりだったがふたりともその樹に吸い込まれてしまった。
「ある夜の対局」
つい先日読んだ『碁娘伝』外伝。
またも怪しげな建物の中に呼ばれ碁娘は対局する。
相手の名は顧言志。
当代一と言われた打ち手と評判の人物であった。
だが碁娘はそれは外見だけであって魂は伴っていないと見抜く。
本人は一年前に死去し目の前にいたのはその遺体を術で蘇らせただけのものだったのだ。
碁娘はそれに気づき腐乱した死体で碁を打つ姿を見るに忍びなく決着をつけたのである。
かっこいい。
「鳥人の森」
もっと正確にいえば鳥女というべきか。
手塚治虫も描いていた。
これが女性マンガ家になると少年、鳥男の話になる。
やはり人間は異性に「自由」を夢見てしまうのか。
しかしレイ・ブラッドベリは中年男を飛ぶ人にしていた。
そこがちょっと違うのかもしれない。
それはともかくとして本作の鳥人は妙にリアルである。
その製造方法はおぞましいものだが時折成功してしまう。まさか。
だが結局人間は鳥のようにはなれない。
それはそうだろう。
体重と筋肉が違いすぎる。
空を滑空するだけの惨めな鳥人ではあるがそれでも少年は鳥少女に恋をする。