ガエル記

散策

『彼方へ』諸星大二郎短編集 その2

 

ネタバレします。

 

「追跡ルポ 波子を捜して」

マッドメンシリーズの特集本のために描かれたもの。

(私が読んだのは『オンゴロの仮面』のみなので続きもぜひ読みたいところ)

「マッドメン」の連載中にはパプアニューギニアには行ったことのなかった諸星氏はこの機に初旅行されたのだがマンガ作品を描くためには現地での取材はない方が想像の翼を広げられると感じられたという。

横山光輝のあの壮大な『三国志』も現地旅行無(時代的に無理だった)資料も限られた物だけで創作されたのもうなずけるようだ。

 

さて現地取材ができてからの作品はフリージャーナリスト青山奈美子は雑誌編集者の赤沢女史と共に「パプアニューギニアへ”藤原波子”を捜しに行く」という企画を立てる話となっている。

彼女たちは現地で観光客向けのマッドマンのショーを見る。

そして奈美子は谷一人というなんだか怪しげな男に誘われ一行と離れ”オンゴロ”へと向かう。

この谷一人は『オンゴロの仮面』で登場する怪しげな男峰隼人の甥っ子である。

怪しげなのは血筋なのか。

奈美子は波子の手掛かりが欲しいばかりに危険な場所へと入り込んでしまいついには谷一人からもはぐれひとりきりで”タンバランハウス”を見つけて中へと入る。

そこには昔ながらの格好をし化粧した男たちがおり奈美子をさらに奥へと誘う。

そこには大きな仮面をつけた神像とその両側に恍惚とした表情の女性が立っていたのだ。

夢心地になる奈美子に神像が立ち上がり捕まえようとした途端、脇の女性のひとりが奈美子の手を掴み外へと出た。

その女性は奈美子をさらに奥にある小屋へと連れて行き休ませてくれ翌朝には帰り道まで案内してくれたのであった。

 

奈美子が女性を見送るとその先には仮面をつけた男が待っているのが見えふたりは森の中に消えた。

 

奈美子は無事赤沢女史のもとへと戻るが谷一人の消息はつかめたものの一体なんだったのかは不明。

奈美子を救ったのは波子だったのか。

しかしその女性と彼女を待っていた男は奈美子が持つ写真の頃のふたり、少年と少女にしか思えなかった。

 

「神宮智恵子のハロウィン」

『BOX』に登場した神宮智恵子のスピンオフ。

ハロウィンの日、神宮は友人、菩提寺安子と待ち合わせする。菩提寺は”悪魔の通り道”を見つけたというのだ。

向かい合う大きなガラス窓の店が同時に定休日になると店の中が暗くなってガラスが鏡になる。

それが向い合せの店だと合わせ鏡になるというのだ。

神宮が止めるのも聞かず菩提寺は自分が見つけた”悪魔の通り道”に歓喜したが折しもハロウィンの日。(しかも友引)「トリックオアトリート」と声をかけられた菩提寺は”悪魔の通り道”に引きずり込まれてしまい神宮も友引だけに友人を見捨てられずその後を追う。

 

その後は諸星氏お得意のドタバタハチャメチャ劇が展開され最後には栞と紙魚子まで登場する。

最強なのはこういう子なのだろう。

 

 

「ジュン子・恐喝」 ~「COM」(虫プロ)1970年

ダメな男と弱い女の物語。

諸星氏の”一応デビュー作”ということらしい。

ご自身は「ほかの作品と絵柄も雰囲気も違うし未熟さが目立って」と書かれているがいやさすがに上手いと思う。

マンガは(その他もろもろだけど)ストーリーではなく演出だというけどこれはまさにその通りだ。

題材としてはよくある話なんだけどコマ運びがうまいので読んでしまう。

だから上手い人が描けばなぜか面白くなってしまうのだ。

本人は不本意だというのはわかるけど。

 

ジュン子が「あんたはどうせヤクザよ!一生なにもできないハンパ者よ!!」と叫ぶシーンはなぜかちょっとおかしくて笑ってしまう。

こういうおかしさを感じてしまうのも上手い人のような気がする。