
ネタバレします。
「烏賊井さんの逡巡」ネムキ2001年11月号
段一知先生の編集者烏賊井さんが訪ねてきて「もののけ特集」をやるので先生に協力してほしいという。
取材費が少なくて手近なところで済ませたいらしい。
段先生は親切に「それなら「胃の頭七不思議」はどうだい」と取材に付き合うと立ち上がったのだ。
さらに先生は紙魚子に七不思議を尋ね教えてもらう。
まずは「股毛神社」に行くと後が順調らしい。
早速股毛神社の境内の樹木で「だるまさんがころんだ」をしている妖怪に遭遇。御札は拒否。
次は躁状寺の「狸囃子」恐ろしくなって御札とタヌキの(小)を購入。スタンプも押してもらう。
それから田んぼの中の「おいでおいで」
「出口のない蔵」と続く。いつの間にかそこは「ねこや」になっていて茶碗を買う羽目になり「おいでおいで」の分もスタンプをもらう。
次はまた股毛神社。縁日でもない夜に神社の境内に夜店がでるという。
それから「吝嗇後屋(けちごや)の番頭の幽霊」
江戸時代吝嗇後屋の旦那はケチで有名で番頭が飯を食いすぎたのに腹を立て殺したという話が伝わっている。その番頭の幽霊が出るという。
果たして縁日でもないのに股毛神社に戻ると夜店がずらりと並んでいた。
烏賊井さんと段先生が通ると次々と声がかかる。金魚すくい、アンズ飴、綿あめ、タコ焼き、風船釣り。
戸惑う烏賊井さんに段先生(と見せかけた妖怪)が「何か買った方が良いよ。でないといつまでも抜けられない」
訝しみながらも烏賊井さんはみんな一つずつ買ってしまう。
番頭の幽霊がずっと無視されるのですがりついてきた。
やっと夜店を抜けるとあの「だるまさんがころんだ」の樹木の前に出た。
しかしそこにいるのは妖怪ではなく段先生ではないか。
「それじゃ?」と振り向くと今まで一緒にいたはずの段先生は妖怪だった。
「わーっ」と逃げたところで段先生が「ころんだ」と振り返る。
烏賊井さんと妖怪は止まったが番頭幽霊は動いてしまい段先生と入れ替わることになる。
「だんなさんが~ころした」
境内の店でスタンプを押してもらい御札も買うことになる。
「手遅れだよ」とはいうもののこれで夜店も妖怪もいなくなった。
しかしこれで六つ目だ。
後の一つは?
というところで栞登場。
「七つ目は「お化け屋敷の小説家の奥さん」よ。知らないのは段先生だけなの」
段先生の家に戻って烏賊井さんは「七つ目、どうしよう」と困っていると奥さんが顔を出した。
「スタンプ押しましょうか」
「「ねこや繫盛記」より 犬魔の秘宝」
栞が飼っているボリス、が経営している(?)雑貨店「ねこや」にカワウソが持ち込んだ「徳川埋蔵金の地図」
「ねこや」のボリスと店員シマキチは早速冬の「犬魔ヶ岳」へと向かった。
そこでは栞と紙魚子がスキーを楽しんでいた。
といっても紙魚子は栞に教えられながら危うく滑っている状態。
そんなふたりと絡みながらもボリスとシマキチは埋蔵金を狙うがたびたび猫の習性が邪魔をしてしまう。
こたつの魔力に勝てないのであった。
しかも埋蔵金の謎が解けない。
が、これはミステリー派の紙魚子が難なく解いてくれた。
ふたり(二匹)はついに徳川埋蔵金を手に入れた。
が、その徳川は綱吉だった。
壺の中身は「骨」だったのだ。
(犬の大好物って意味での骨?)
ボリスはがっくりして帰ることにした。
シマキチは「でも旅館で刺し身の残り物をたくさんゲットしましたよ」
さすが諸星作品。こういうギャグ調でもミステリーがしっかりしているので読み応えある。
「ゼノ奥さんのお茶」
ゼノってなんだろうか。
ゼノ奥さんの家には悩みごとがある人が訪れるという。
そしてたいてい何かを置き忘れていくらしい。
青木夏子はこの前ここを訪ねた沢本冬美の友だちだという。
冬美がなにかを忘れていませんか、とゼノ奥さんを訪ねたのだ。
奥さんは夏子にも優しくお茶を淹れてあげる。
夏子によると冬美の家庭は崩壊していて悩んでいたのだがここを訪ねて以来両親と弟はゼノ奥さんからもらったお茶を飲んで一日中うつらうつらしているという。
身体中に花が咲き幸福になったのだ。
冬美は悩みから解放されたがゼノ奥さんの家に何か忘れてきたようでならないらしいのだ。
夏子は代わりにゼノ奥さん邸を訪ね部屋の中を探し、冬美の顔の半分を見つけ出す。
そして持ち帰って冬美に渡したのだった。
ゼノ奥さんの庭では栞と紙魚子がお茶を頂いていた。
しかし彼女たちには副作用はないという。
ほんとにお茶のせいかしら?と奥さんは微笑むのだった。
「井戸の中 歌詠む魚」
瑞希と両親一家は新しい家が建つまでの一時、古い家を借りて住むこととなった。
しかしその家で瑞希は次々と奇妙な体験をする。家に短歌が記されているのも気になった。
怖くなった彼女は栞と紙魚子に頼った。
すっかり怪奇事件請負人となったふたりは瑞希の家を訪ね問題の短歌を見てすぐ妖怪のようなものに遭遇する。
さらに押し入れからチョウチンアンコウらしき絵も出てきた。
紙魚子は短歌を調べ、作ったのは昭和三、四十年頃の歌人、萱間魚水で最期に住んでいたのが間違いなくこの家だったと知る。四十代で死に奥さんと二人きりのわびしい生活だったという。絵は奥さんが描いたものらしい。
そして紙魚子は次々と短歌の意味を解釈していった。
ついに紙魚子は井戸に手掛かりがあると判じ井戸に入る。井戸の中には小さな部屋があった。
そこへ来たのはすっかり姿の変わった萱間魚水だった。
背中には奥さんがくっついている。
魚水は紙魚子が持ってきた自分の歌集本をもらい「もうあの家に未練はなくなった」と告げた。
すると背中の奥さんが「じゃあ今度はあたしの望みにつきあってくださいな」と位置を逆転した。
その姿はあの絵のとおりのチョウチンアンコウになり夫の魚水はその腹にくっついた。
ふたりは井戸を抜けて竜宮へと向かったのだ。
突然、三人は激しい水流に巻き込まれ気づくと川面に浮かび出た。
胃の頭池であった。
怖い話が悲しい話になりロマンチックな話へ、そしてオチ。
楽しむ。