ガエル記

散策

『金日成の子供たち』キム・ドギョン

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アマゾンプライムにて鑑賞。ドキュメンタリー映画です。

 

アマプラで偶然見つけての鑑賞でした。

非常に質の高さを感じさせるドキュメンタリー映画です。

大きな感動を覚えたにもかかわらず「事実なのだろうか?」という疑問が湧いてきてしまったのも正直な気持ちでした。

 

1950年代朝鮮戦争によって北朝鮮と韓国には10万人以上の戦災孤児が生じてしまったといいます。北朝鮮は1万人に近い子供たちを同じ共産国家である東欧の各地に送りそこで孤児たちの養育をしたのですがその事実は長い間知られることはなかった、というドキュメンタリーの内容なのでした。

 

私が感動しながらも疑問を感じてしまったのはいきなり北朝鮮から来た大勢の孤児たちを受け入れた東欧の人々が彼らをとてもかわいがり慈しみ数年後に彼らが帰国してしまった後子供たちから「お母さんに会いたい」という手紙がくるような愛情深い交流が多くあったということからでした。

そんな素晴らしいことに疑問を感じる私が歪んでいるのかもしれませんが昨今の人種差別へイトクライムを聞かされ続けている身であれば人種の違いを超えてこんなにも優しい情愛がたくさんあったという歴史がむしろ不思議とさえ思えてしまうのです。

 

ルーマニアの女性ミルチョーユは北朝鮮から来た監督兼教師の男性と恋仲になり一時は北朝鮮で共に暮らし一人娘が生まれます。

が、当時外国人を排除し始めていた北朝鮮は彼女の夫チョ・ジョンホ氏に転勤を命じそのまま彼は帰らぬ人となり妻には彼の死亡を伝えたのでした。途方に暮れたミルチョーユさんは娘を抱えてルーマニアに帰国しますが80歳を越えた今でも夫との再会を待ち続けています。一人娘は両親の血を受けた美しい人で「母はずっと父だけを愛してきました」と言います。

 

ネット記事で見つけたのですが本作の監督キム・ドギョン氏がこのドキュメンタリーを作るきっかけとなったのがあのパク・チャヌク監督から聞いた言葉だったというのです。

北朝鮮に送還された朝鮮人の夫を、40年以上も待ち続けているルーマニア人のおばあさんがいるという話を聞いたのです。北朝鮮の戦争孤児問題を初めて知った瞬間でした」 

大学の先輩だったパク・チャヌクから聞いたこの事実がキム・ドギョン監督を動かした、というこの文章で私は一気に「これは事実だったのだ」と信じることにしました。

 

koreana.or.kr

 

ポーランドチェコルーマニアハンガリーブルガリアの五か国に北朝鮮戦災孤児たちは養育されたのです。といってもそれは同時に北朝鮮から送られてきた厳しい監視下においてであって子供たちは常に祖国への忠誠を誓っていながらの生活ではあったのでした。

同じ共産圏とはいえ北朝鮮とは全く異なる自由さがある東欧での生活は子供たちに深く影響したに違いありません。

脱走しようとして捕まった子供たちもいるという話なのですが中には逃げ切った子供もいるのではないのかと期待してしまう私でした。

 

こういう話を知るとすぐに『ガンダム』を思い出してしまうガンダム脳を持っています。別に『ガンダム』にこういう話が出てきたわけではないですが戦争によって苦難の人生を歩むことになる戦災孤児の物語は私にとってイコール『ガンダム』なのでしょう。

若い人なら『進撃の巨人』を思い起こすかもしれません。

戦争は悲惨を生み出します。そこにどちらが正しいなどという答えはありません。

犠牲となるのは弱い存在の人々そして子供たちです。

だからこそ優しい情愛に涙してしまうのです。

でもそれが戦争ではない世界で起きて欲しい。

 

そして現在社会のような人種差別・ヘイトクライムを無くして思いやりのある世界を作っていきたいのです。